「すぐやる脳」をつくる 三つの法則①

茂木健一郎『結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方』セレクション

更新日 2020.07.29
公開日 2015.06.03
  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

 私自身、毎日トップスピードで、精力的に働くことができています。

 なぜなら、「脳内ダイエット」で自分が取り組むべきタスクをあらかじめ整理し、「やる」「やらない」というボーダーラインを明確にしているからです。
 けれどもそうして脳内にスペースをつくっただけで、行動力や創造力が勝手に生まれてくるわけではありません。動きが軽やかで、アイデアがどんどん湧き上がる脳、これこそが「すぐやる脳」の重要な特徴です。

 私は長年の経験から、そうした行動力、創造力を生み出すために効果的な三つの法則をあみ出しました。これからご紹介しましょう。

 まず第一の法則が「瞬間トップスピードを習慣化する」ということです。
 これは、往年の人気プロレスラーの名前を取って「タイガー・ジェット・シン方式」などと言い換えることもあるのですが、ともかくいきなりトップスピードで、すぐに行動に移すということです。
 タイガー・ジェット・シンは試合のリングに入るやいなや、花束贈呈のセレモニーを待たず、いきなり相手につかみかかり戦闘を開始、一瞬にして会場の熱気を最高潮へと持っていきます。

 この「瞬間トップスピード」が、行動力強化のために必要なのです。

 そもそも人間がいきなり行動を開始するためには、脳の背外側前頭前皮質(dorsolateral prefrontal cortex)という回路を鍛えることが必要です。

 私がよく学生に言うのは、「キミたち、勉強するときにぐずぐずしているだろう? そうじゃなくて、勉強をしようと思ったら、パッとその瞬間にやるんだよ」ということです。
 みんな最初はなかなかそれができないのですが、脳の回路も筋肉と同じで、毎日続けることで強化されていきます。
 私の場合、仕事を立ち上げてからトップスピードに至るまでの時間が非常に速いと自負しています。
 たとえばそれは、最近始めた英文のライティングでも効果を発揮しています。とにかくウォーミングアップもなしに、PCをパッと立ち上げたと同時に、すぐさま書き始めるのです。そこには準備をするという意識がありません。
 どうしたらできるのか? それは先ほども言った「特別に意識せず、その行為を習慣化する」ということなのです。

 歯磨きでもするように、あれこれ考える前にパッとやってみるのです。何度か試しているうちに、ある日、考えずにできている自分に気がつくはずです。

 

茂木健一郎 (もぎ けんいちろう)

1962年東京生まれ。 東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。 理学博士。脳科学者。
理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。 専門は脳科学、認知科学であり、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。
2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。 2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。
主な著書として、『結果を出せる人になる!「 すぐやる脳」のつくり方』『もっと結果を出せる人になる! 「ポジティブ脳」のつかい方』(ともに学研プラス)、『人工知能に負けない脳』(日本実業出版社)、『金持ち脳と貧乏脳』(総合法令出版)などがある。

 

作品紹介

結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方

過重なストレスと処理すべきタスクに溢れた現代を生き抜くには「すぐやる脳」が必要だ!脳科学者・茂木健一郎流・行動力強化術。
定価:本体1,300円+税/学研プラス

バックナンバー

  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

あわせて読みたい