「ほしじいたけ ほしばあたけ」シリーズ(講談社)などユーモアあふれる絵本で知られる絵本作家、石川基子さん。今月刊行された『ぼくのランドサル』は、入学前の子どもたちの憧れの存在であるランドセルをユーモアたっぷりに描いた絵本です。石川基子さんに作品作りにまつわるエピソードや、絵本作家としての歩みなどをたっぷり伺いました。

内容紹介
今日はランドセルを買ってもらう日。家族みんなでランドセル専門店に出かけます。どんなランドセルにしようかな~? あれれ? 「ランドサル」に「ワンドセル」……!? 変わったランドセルがいっぱいあるよ。小学校が楽しみになる、ランドセルの魅力がたっぷり詰まった絵本です。
石川基子さん特別インタビュー
―「イシカワさんはやっぱりダジャレだ!」と看破され、生まれた絵本
『ほしじいたけ ほしじいたけ』のファンです~。
あのバカバカしさがたまりません。
というGakkenの編集者NさんからのFacebookメッセージ。それが、Nさんとのやりとりの始まりです。その後、いくつか絵本のラフを見せましたが、Nさんの琴線に触れるものはなく、時ばかりが過ぎていきました。何作目かの没ラフの後、Nさんに「イシカワさんはやっぱりダジャレですよ!」と看破され、ダジャレをモチーフにした絵本のラフを描けとのミッションが課せられました。
私には元々「ダジャレは根拠」という持論があって。どういうことかというと、例えば拙著『どっきリサイクルショップ』(2021年にマクドナルドのハッピーセット絵本として配布)では、いたずらをする商品がいろいろ出てくるのですが、そのひとつとして、載せたものを振動で落としてしまう「テーブルブル」が登場します。単に「ものを落としてしまうテーブル」としただけでは説得力がありません。「テーブルブル」というダジャレネーミングによって、初めてこのテーブルはブルブル震えてもよいのだということになるのです。というわけで、ダジャレ絵本ラフを3作描いて送り、そのうちの1作が「ランドサル」でした。

▲納得のいくまで何度も描き直したラフ

▲作業場の様子 。息子のお古の学習机にベニヤ板を置き、面積を広くして使っています。ラフや見返しの線画は、iPadで描いています。
「ランドサル」は、以前三重県四日市市の子どもの本専門店メリーゴーランド主宰の「絵本塾」に通っていたころ、ラフを作ったことがあり、それを改稿しました。その最初のラフはお話の設定などに難があり、ボツに。違うシチュエーション(ランドセルたちの訓練校)にして、再度ラフを描きました。警察犬の訓練のパロディのようなシーンなど、自分ではすごくおもしろい!と自信満々だったのですが、編集部内では受けが悪かったとのこと。いまだにこのラフには未練がありまして、もしも何かの間違いで『ぼくのランドサル』が大人気!続々重版となった暁には、スピンアウト作品として日の目をみせてやりたいと願っております。
で、その後につくった、ランドセル専門店の店長が、「ぼく」やその家族に、ちょっと変わったランドセルをおすすめするという内容のラフがOKになり、今に至ります。
―子どもの毎日は大変なことばかり。守護天使みたいな存在がいたらいいのに……という思いを込めて
このお話を描きたいと思った背景のひとつには、ときどき報道される、下校時の不審者による連れ去りとか、登校の列に車が突っ込むなどの痛ましい事故や事件がありました。子どもたちを守ってくれる守護天使のような存在がいてくれたら……。あるいは事件というほどでなくても、夏休み前に鉢植えや防災頭巾、工作など山のように荷物を持って帰るの大変そうとか、危険な暑さの中の登下校とか、タブレットや教科書で重くなったランドセルが小さな体にのしかかるとか。自分の小学生時代のことを思い出せば、下校途中トイレを我慢して変な歩き方になるとか、転校直後などは迷子になっちゃうとか、田んぼに給食の白衣を落としてしまうとか。この絵本では、そういうピンチのお助けマン的ランドセルを描きたかったんです。近頃は、危険回避のため道草もあまり許されないようですが、それが体験や学びに繋がるのではとも感じます。安心して道草させられる見守りランドセルがいてくれたらいいのに、と思います。

▲この絵本では、ランドサルが登下校のときにいろいろと助けてくれる
新しい世界に踏み出すのは、どきどきわくわく、不安もあるかもしれないけれど、応援しているよ! 自分のランドセルがイマジナリーフレンド的な存在として、愚痴を聞いてくれたり、慰めてくれたり、元気づけてくれたり……。実際の学校生活でも、子どもたちがそのように空想の力を拡げてくれたらいいなと思っています。

▲「ランドセルはきみのともだちになってくれるよ」というメッセージを込めた
―この絵本で好きなシーンは、実体験や取材を重ねて描いたところ
この絵本の中で好きなシーンは、朝、玄関に忘れていきがちな持ち物をランドサルがピックアップしてくれるところですね。息子たちが小学生だったとき、上履き入れや鍵盤ハーモニカなど忘れそうなものをあらかじめ玄関に置いておいてやっても、隙を狙ったように家を出てしまい、あとには給食当番のエプロンがぽつん。何度自転車で後を追ったことか…。本当にこんなランドセルが欲しかったです(笑)。

あとは、木登りが得意なランドサルの本領発揮の場面。公園のクスノキをスケッチしたり、写真を撮ったりして描きました。幹の上の方の光の差している部分と逆光となった陰の部分の対比がきれいだなと思ったので、絵でもその感じが出ていたらいいな……と思います。

授業や給食風景は、小学校に勤めている友人に写真を撮って送ってもらいました。残念ながらセキュリティの関係で地元の小学校に取材を断られたのですが、友人の協力で小学校の今を垣間見ることができました。やはりリアルな様子を見られると絵に力が入りますね。

―自分にとって、絵本とは「コミュニケーションのツール」
自分にとって絵本とは何かと問われたら、「コミュニケーションのツール」と答えています。子育て時代は、毎晩3人の息子それぞれに、膝に載せて絵本の読み聞かせをしていました(地元に「みどり子ども図書館」という私設の図書館があり、その設立者だった佐藤宗夫先生に多大な影響を受けまして)。日中叱り過ぎて、ケンカのようになってしまっていても、日課にしていたら、意地を張ることなく膝に載せて絵本を読んで仲直りしていました。息子たちは毎晩の読み聞かせのことなど全然憶えていませんが(笑)。三男の授乳のたびに、当時2歳の次男が「ほん、もむ」(本、読む)と言いながら、絵本を持ってとことこ寄ってきたことが思い出されます。
絵本塾生OBどうし、絵本作家どうし、あるいは絵本に関わる人との間でも、絵本の話題で盛り上がり、楽しい時間を過ごせます。私の描いた絵本について、知らない人からSNSなどで感想や意見をもらえるのも、楽しい時間のひとつです。長年講師をしていた造形教室で、導入として絵本を使うこともたびたびありました。その日の活動内容に関連した本が見つからないときは、自分が適当に描いた絵本を見せたり。関連した本でなくても、毎回子どもたちに絵本を読んでいると、落ち着いて説明を聞いてくれるようになる気がします。
―1枚の絵にアイディアを込めるのが楽しくて、絵本作家への道を模索した
大学を卒業し(京都教育大学特修美術科、日本画専攻)就職後や、出産を機とした退職後もたまーに日本画を描いたりしていました。が、日本画は制作過程が大変というか面倒な面があり、画材の扱いも、子育ての合間にちょこちょこ描くのは難しく感じていたので、アクリル絵の具など他の画材を使って絵を描くようになりました。
次第に公募ガイドなどで見つけたコンテストに応募するためのイラストを描くように。カレンダーや年賀状のイラスト募集などに挑戦していました。デザイン、色彩のセンスがなく、おしゃれなイラストでは太刀打ちできないため、1枚の絵に物語を込めるというかクスッとした笑いを誘うとか、そういう路線で賞を狙っていました。例えば年賀状コンテストでは、火を噴く竜が餅を焼いているところとか、おサルが一人わびしくカップバナナを食べようとしているところなど。アイディアを考えるのが楽しく、また入賞の知らせを受けた時の高揚感が病みつきになり、公募にハマっていきました。
あわよくばイラストレーターになれたらなあと思い始めたのもこのころ。そのうち自分に挑戦できるイラストの公募が限られてきたので、絵本のコンテストにも応募するようになりました。自分にはお話を考えるのは無理と思っていたのですが。絵本のコンテストには、「野菜」「おべんとう」「あな」などお題があるものがあって、それにチャレンジすることがお話を考える練習になりました。でも、「可児手づくり絵本大賞」「おひさま大賞」「MOEイラスト・絵本大賞」などで入選はできても、なかなか最優秀賞まではたどり着けません。
あわよくば絵本作家に、と密かな野望を持ち始めたこともあり、何か戦略を練らねばと思っていたところ、メリーゴーランドの絵本塾を知り、通うことにしました。そこでは、絵本についての基本的なことのほか、作品には作者の価値観が出ることなど絵本制作の心構えのようなものを学びました。とともに、酷評に耐えられる図太い神経も身に付けました(最近は却下されることを恐れ、編集者さんに新ラフを出す図太さがなくなっているので、初心に帰りたいです)。作家(自分)の目と読者の目、両方をもつことの大切さも知りましたが、なかなか難しいですね。
この絵本塾で作ったラフを元に描いた絵本がピンポイント絵本コンペで最優秀賞に、その後、同様にそこで作ったラフを作品化したもので講談社絵本新人賞佳作、翌年『ほしじいたけほしばあたけ』で新人賞本賞をとって全編改稿。出版デビューにつながりました。絵本塾生仲間とは今でもときどき情報交換したりしていますし、そういうつながりも含めて、絵本塾で得られたものは本当に大きかったと思います。
―息抜きには、地元・愛知できのこを探し歩いて…… 「撮り菌」です(笑)
絵本を描いたり、それに関連することを調べたりするのが趣味のようになっていますが、それ以外のことでは、野山や公園できのこを探すのが好きです。野生のきのこを採って食べる「食べ菌」ではなく、写真を撮るだけの「撮り菌」ですが。昨年は絵本制作のため、一度も三河きのこの会主催のきのこ観察会に参加できず、残念! 名古屋、特に私の住む辺りは、地質的にあまりきのこの生育に向かない(水捌けがよい)らしく、たいしたきのこに出会えませんが、雨が続くと、あそこの公園、キツネノタイマツとかオオシロカラカサタケとか出ていないかな?とそわそわしてしまいます。こんな息抜きをしながら、次回作への意欲を燃やしている毎日です。
石川基子さん、すてきなお話をありがとうございました!
■石川基子さんの最新刊『ぼくのランドサル』。「こんなランドセルがあったらいいな」がいっぱい詰まったユーモア絵本。読み聞かせだけでなく、小学校の朝読や読書感想文にもお勧め。ぜひお子さんとお読みください。
著者プロフィール
石川基子さん
京都教育大学教育学部特修美術科卒業。子どもの本専門店「メリーゴーランド」の絵本塾で絵本作りを学ぶ。第12回ピンポイント絵本コンペ最優秀賞、第36回講談社絵本新人賞受賞。主な絵本に「ほしじいたけ ほしばあたけ」シリーズ、『なんと!ようひんてん』(すべて講談社)などがある。
商品概要

■書名:『ぼくのランドサル』
■作・絵:石川基子
■発売日:2026年 3月 5日
■発行:Gakken
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