「人の体ってすごい!」研究者だったからこそつくれる、人体の「驚き」と「感動」がつまった図鑑とは

クリエイター・インサイド『学研の図鑑LIVE 人体 新版』

更新日 2024.07.19
公開日 2023.11.17
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 Gakkenが生み出す、数々の個性的で魅力的な商品・サービス。その背景にあるのはクリエイターたちの情熱です。(株)Gakken公式ブログでは、ヒットメーカーたちのモノづくりに挑む姿を、「インサイド・ストーリー」として紹介しています。

 今回は『学研の図鑑LIVE 人体 新版』の編集を手掛けた、松原由幸です。

「編集者」画像

 かつて大学で生物の骨格の研究をし、大学院で博士課程まで修めた経歴を持つ編集者・松原由幸は言う。

「人の体って本当によくできているんですよ」

 今回、松原が作り上げた新たな図鑑 は『学研の図鑑LIVE 人体 新版』。 目に見えない部分を扱う『人体』の図鑑は、『恐竜』『動物』などの図鑑に比べて、子どもたちにわかりやすく伝えるのが難しいテーマだ。その“難しさ”を、いかに解消するか。松原の努力に迫る。

 

◆「これはぜんぶ、きみの物語」

 「まずは読者に、体というものに興味を持ってもらいたい」。そう考えた松原が図鑑の冒頭にかかげたのが〝これはぜんぶ、きみの物語″というメッセージだ。

 さらに読者自身と重ね合わせてイメージしてもらうため、「食べる」「考える」など子どもたちが生活しているシーンの写真を図鑑の各所にちりばめた。

「そもそも人体図鑑に書いてあることって全部、わたしたち自身、読者自身のことなんですよね。子どもたちに、そこをちゃんと伝えたかったんです。その上で主体的に、前のめりに読んでもらえたら一番いいなと思って 」

「制作にあたって」画像

 どうすれば人体の面白さを読者に届けられるか。制作にあたっては、「人体」をテーマにした他の学習図鑑にも目を通した。情報量を多くして解説する、あるいはインパクトのある写真をたくさん並べるなど、それぞれ読ませる工夫をしていた。

 松原自身、「学研の図鑑LIVE 新版」シリーズの『恐竜』を担当した際には、高精細なイラストをたくさん掲載し、読者を楽しませてきた。しかし『人体』では、同じことをしただけでは足りない気がした。『人体』の図鑑が、“内容を理解してこそ楽しめるもの”だからだ。

 松原は専門書を読み漁り、研究者だったころの知識も総動員しながら熟考を重ね、その結果たどり着いたのが、“人体を階層性とつながりで表現する”という切り口だった。

 

“階層性とつながり”で、人体を丸ごと表現する

「“階層性とつながり“とは何か。松原は解説する。」画像

 “階層性とつながり“とは何か。松原は解説する。

「人体は、会社の組織構造に例えると分かりやすいです。たとえば出版社なら、編集の部門があって、営業の部門があって、広報の部門があってというように、役割ごとに部門が分かれています。その中で営業ならば、何営業課というように課に分かれ、その課の中に複数のチームがあるわけです。つまり組織は「部→課→チーム」のような“階層”があり、それぞれの階層が“つながって”、成り立っているわけです」

 人体も、大きな役割のちがいによって骨格系、消化器系、神経系などの「器官系」という部門に分かれている。消化器系は、食道、胃、小腸などの「器官」に分かれ、器官は表皮や神経などの「組織」から成り、組織も「細胞」が集まってできている。

「つまり、人体にも会社の組織構造のような“階層”があって、それらがつながって人体を形作っているんです。この“階層”と“つながり”をクリアにイメージできることが、“人体をわかる”ということだと捉えました」

 

◆まるで人の体のようなレイアウト

 “階層とつながり”を読者に分かりやすく伝える。その命運を握るのは図鑑のレイアウトだと、松原は考えた。レイアウトイメージをじっくりと練り上げると、特集や写真ページを除いた、100ページに及ぶ本編のラフを、一気に書き上げたという。

「この期間は、ほんとうに集中していましたね。楽しくて仕方がない感じでした。今までになかったものが目の前に現れてくる瞬間の連続でしたから」

 まず本編の冒頭に配したのは、8つの器官系を全部見渡せる、人体イラストの一覧ページである。

「冒頭の観音開きのページ」紙面

▲冒頭の観音開きのページ。「骨格系」「消化器系」「循環器系」などの器官系ごとに全身を見せるイラストが並ぶ。

「この一覧ページの人体イラストの一つ一つは、本編で器官系ごとに区切った各章の冒頭にも掲載しています。こうすることで各器官系の位置関係がひと目でわかるようになっています」 

 各章のページの関連づけも意識した。たとえば消化器系は、一本の管の中を食べ物が通過しながら栄養を吸収していくため、器官同士の前後のつながりがとても大事になる。

 そこで、紙面の左側に場所を示すイラストを掲示し、『胃のつづきがこれ、そのつづきがこれ』というように、位置的な関係性を理解しやすくした。さらに、

「見開きのページは視線を左から右へ移動させるだけで“場所、つくり、はたらき、細部”の関連性が見渡せるようになっています」

「見開きのページは視線を左から右へ移動させるだけで“場所、つくり、はたらき、細部”の関連性が見渡せるようになっています」画像

 すなわちページ自体も、“階層性とつながり”を意識したレイアウトになっている。つまりこの図鑑は、全体が“人体のようなつくり”になっているのだ。

 

◆人体の“びっくり”から目が離せない

 松原が一番気に入っているのは、小腸の見開きページだ。小学校でも中学校でも理科の教科書で取り上げられる小腸は、胃や十二指腸で消化した栄養を吸収する重要な器官だ。松原いわく「恐竜図鑑で言えばティラノサウルス」だという。

『学研の図鑑LIVE 人体 新版』より「小腸」のページ 紙面

▲『学研の図鑑LIVE 人体 新版』より「小腸」のページ。右上の写真は最新の電子顕微鏡で撮影されたもの。

「何よりすごいのが、栄養を吸収するための、執念ともいうべき内壁の構造です。小腸の壁から栄養を吸収するためには、壁の表面積が広い方がいい。そのために小腸の壁はひだひだになっているんですが、顕微鏡で拡大してみると、そのひだひだに“じゅう毛”といわれる、さらに細かい突起がたくさんあるんです。しかも驚くべきことに、じゅう毛を拡大して見ると、もっと小さな毛のような突起がびっしりと生えている。表面積を増やすという機能のためにここまでやるのか、とびっくりしますよね」

 その驚きをさらに読者に届けるため、小腸のページには、最新の超高精細電子顕微鏡で撮影した、小腸内部の超拡大写真も掲載した。人体の学習図鑑でここまで細微な小腸の写真が掲載されるのは、なかなか無いことだ。

 今回の『人体』には他にも、細密画像が多く掲載されている。監修陣の一流研究者に電子顕微鏡のエキスパートが新たに加わったおかげで実現した。

「細密画像が多く掲載されている」画像

◆特集や特典が実現する子どもたちの“図鑑体験”

 「学研の図鑑LIVE 新版」 シリーズは、“図鑑体験を、あたらしく。“というコンセプトをもとに制作されている。図鑑を読んだあと、実際に行動し、体験を経てより知識を深めてもらいたい。そのため、たとえば『恐竜 新版』では博物館の案内や、実際に博物館で見られる化石を積極的に掲載するなどの工夫をほどこした。

 では、人体におけるあたらしい〝図鑑体験″とはなにか。

 松原は「それは生活そのものだ」と考えた。                        

「たとえば、この図鑑を読んだ後に食事をするとしますよね。すると食べながら、“今、胃がこんなふうに働いているな”とイメージできる。食べることそのものが、図鑑体験になるんです。図鑑を“読む”だけでなく、行動して体感して学んでもらえるきっかけを作りたいと思いました」

「編集者」画像

 特典DVDには「体感」できるオリジナル動画として「速く走るための神経と姿勢のトレーニング」を取り上げている。

 アスリートの講師が子どもたちに、姿勢と足の振り方、手と足で違う動きをするなどのトレーニングを施す。すると、子どもたちの走るタイムが縮まっていくという、思わず自分もやってみたくなる内容だ。

「みんな、体育の授業で走る機会もありますよね。その時、無意識のうちに走るだけじゃなくて、“どうやると速く走れるのか”と考えると、自分の体と向き合うきっかけになるのではないかと考えました」

「特典DVDより、50m走が速くなるストレッチの一場面。」画像

▲特典DVDより、50m走が速くなるストレッチの一場面。

 特典DVDでは他にも、体のしくみを使った「薬指が動かなくなるマジック」や、「人体ミクロツアー」や「内臓を覚える歌」など、体験型の楽しいコンテンツを収録した。

 この他、スマートフォンで使用できるAR機能では、脳や心臓などの器官が3DCGで立体的に再現され、前後上下左右、あらゆるアングルから観察できる。「本当の大きさで内臓が見られるポスター」はB3の大サイズ。壁に貼っても、自分の体に当てても楽しい。

 特集ページでは、感染症や薬、予防接種、食育など、子どもたちの生活に密接に関わるテーマも充実させた。社会教育やキャリア教育にも使える医療従事者のお仕事紹介ページもあり、図鑑体験を広げるさまざまな工夫がなされている。

 

◆「体ってよくできている!」、この感動を届けたい。

 松原はかつて生物学の研究に携わっていた。専門は「動物の骨格の発生と進化」。大学院に進んで博士号まで取得した。その研究は、驚きと感動に満ちていたという。

「編集者」画像

「研究で生物の体のしくみと向き合う日々は、“よくできているなあ” という感動の連続でした。“これが本当に自然にできるのか”って。だから、自分で人体の図鑑を作るなら、そうした感動を伝えたいと思っていました」

 恐竜のビジュアルに「かっこいい!」と感じるように、人体のしくみに「すごい!」と驚いてもらいたい。そのために、あえて難しい専門用語も取り入れ、踏み込んだ内容も掲載した。

「未就学の子や小学1、2年生の子には『体の中をのぞいたらこんなふうになってるの!?』みたいな、びっくり箱的な驚きから入ってもらって。小学校高学年ぐらいで文脈が分かるようになって『あのページのあれが、ここにつながってたんだ!』としくみを理解したときに感動に結び付くと思うので、ぜひ長く読んでほしいです」

紙面

 研究者だった松原だからこそ、読者に届けられる感動がある。

 “人の体のようによくできている”『学研の図鑑LIVE 人体 新版』。担当した松原由幸は、この10月から学研図鑑チームの編集長もつとめている。今後の「学研の図鑑シリーズ」にさらに注目したい。

 

クリエーター・プロフィール

 松原由幸(まつばら・よしゆき)

「編集者」画像

 愛知県出身。2017年名古屋大学大学院理学研究科 生命理学専攻博士後期課程修了。博士(理学)。同年学研プラス(現・Gakken)に入社。学参・辞典編集室で参考書などの編集制作に携わり、現在は図鑑・科学編集課に所属。『学研の図鑑LIVE 恐竜 新版』の編集制作も担当した。

商品の紹介

『学研の図鑑LIVE 人体 新版』書影

▼▼図鑑で動画で3DARで3歳からずっと使える「人体図鑑の決定版」登場!▼▼シリーズ累計250万部!「学研の図鑑LIVE 人体 DVDつき」がパワーアップした新版として発売します。人の体は不思議がたくさん!CGイラストや顕微鏡写真などの本格ビジュアルで、直感的に体のしくみに興味をもつきっかけをつくります。臓器の解説は、「体のどこにあるか」から始まり、つくり・はたらき・細部までが見開き1ページで分かるように工夫にしています。3大特典の1つ、完全オリジナルのDVDは、アスリートによる走り方教室や、内臓を覚える歌など年齢問わず楽しめる内容です。新しくなった「学研の図鑑LIVE 人体 新版」で人体の不思議な世界に飛び込みましょう!

商品詳細はこちらから

■書名:『学研の図鑑LIVE 人体 新版』
■発行:Gakken
■発売日:2023年11月16日
■価格:2,640円 (税込)

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