小学校に上がると、漢字や足し算・引き算といった新しい学習をしなければなりません。そんな中でも、大きな壁となるのが作文ではないでしょうか。これまで長い文章を書く機会のなかった子どもにとって、原稿用紙のマスを埋める作業はとても大変なことです。そこで、作文の苦手な子ども向けの「書き方のコツ」と、家庭でできる日々の取り組みをご紹介します。
低学年の子どもがぶつかりやすい作文の壁
文字の読み書きや計算の問題ならすらすらできるのに、「作文を書きましょう」という宿題を出されると手が止まってしまう子ども達。そんな子どもの書く作文を見ていると、いくつかの共通点が見えてきます。それは、「出来事だけをシンプルに書きすぎる」「楽しかったです、など単純な感想で締める」といった点です。
私の子どもが初めて学校の宿題で書いた作文は、「休み時間に遊んで、楽しかったです。」というものでした。小学校に入学したての子どもには、ありがちな文章です。この作文に対して、先生からついたコメントは「何をして遊んだのかな?」でした。これは出来事だけをシンプルに書きすぎているために、読み手に状況がまったく伝わらない例ですね。
さらに私の子どもの癖として、何についての作文でも「楽しかったです」で終える点がありました。状況説明が足りない状態で「楽しかったです」と言われても、読む側は何がどう楽しかったのか、さっぱりわかりませんよね。
このような文章になる原因は、子どもに起こった出来事を詳しく説明し、それに対してどう感じたのかを書き表す力が備わっていないためです。では、その力をつけるためにはどうしたら良いのでしょうか。書き方のコツと普段からできる取り組みを見ていきましょう。
5W1Hに分けて考える
いつ(When)どこで(Where)誰が(Who)何を(What)なぜ(Why)どのように(How)の5W1Hは、どんな文章でも基本となるものです。これらの要素が揃っていれば、作文の完成度は高まります。しかし作文の苦手な子どもが書いた文章には、これらが揃っていません。
そこで実際に書き始める前に、子どもと会話をして必要な情報を引き出しておくことが大切です。「何についての作文を書こうか?」「誰と、何をして遊んだのかな?」「場所はどこだったの?」「遊んでどんな風に感じたの?」といった調子です。話しながら、紙に控えておくと良いでしょう。実際に作文を書き始めるとき、それが大事な材料になります。
私はライターとして、日々いろいろな文章を書いていますが、まっさらな状態でいきなり書き始めることはしません。まずテーマにそった情報を集め、それをどう並べていくかを決めてから執筆にかかります。
マラソンにたとえて言うのであれば、スタートライン・通過点・ゴールをあらかじめ決めておき、その道から大きく外れないように書くのです。これをしないと、進むべき方向がブレてしまい、情報が足りなくなったり、話が大筋から逸れてしまったりします。
学校で書く作文も、書き方の基本は変わりません。低学年のうちは一人でそれをするのは難しいので、保護者の方が会話を通してサポートしてあげましょう。
日記をつける
文章を書くことは、慣れない人にとってはとても難しい作業のように思えます。しかし実際には、書けば書くほど慣れるもの。運動と同じで、繰り返し練習することによって、ある程度の力は自然に備わっていくものです。
それに役立つのが、日記です。学校の宿題と違い、何を書いても直されることのない日記は、子どもの創造性を高めながら同時に文章力を養うことができます。
「日記が続かない」というお子さまもいらっしゃると思いますが、低学年のうちは何事も、保護者の方からの声がけが継続のきっかけとなります。お子さまが書き上げた日記を保護者の方が毎日読んで、「今日はこんなことがあったんだね」「◯◯くんの他は誰がいたの?」と声をかけてあげましょう。それがお子さまにとって励みになり、書くことの楽しさを知るきっかけになるはずです。
普段の会話に「たとえ」を用いる
子どもは保護者との会話や、よく耳にする言葉から語彙を増やしていきます。知らない言葉を書くことはできないため、普段の会話からいかに語彙力をつけさせるかも、文章力向上のためには大切なことです。
具体的には、会話の中にたとえを用いる方法があります。たとえばイルミネーションを見たら「まるでお星さまみたいに綺麗だね」なんて声をかけてみるのも良いですね。
また、子どもとの会話でよくあるのが「今日の学校はどうだった?」「楽しかったよ」というもの。「楽しかったです」で締める低学年の作文と同様の傾向が見られます。
そこでもう少し踏み込んで「何がおもしろかったの?」「どんなところが楽しいと感じたの?」などと質問をしてみましょう。すぐには答えられないかもしれませんが、続けることによって物事を深堀りして考える癖が身につきます。
書き慣れていない人にとって、文章を書くことは「難しい」と感じるものです。大人だってそうなのですから、それまで長文を書く機会がまったくなかった子どもにとって、作文が大きな壁となるのは当たり前のことだと言えます。
保護者はつい、間違いを見つけるとあれもこれも指摘したくなりますが、それでは子どものやる気がしぼんでしまいます。間違いの指摘は1点だけに絞り、まずは慣れない作業をやりきったことを褒めてあげましょう。
文章は、書けば書くほど力がついて上手になりますので、低学年のうちは書くこと自体がいやにならないよう、保護者がしっかりサポートしてあげたいですね。
ライター:七尾 なお
生活コラムから経済誌まで、ウェブや雑誌を問わずさまざまな媒体で執筆をするフリーライター。男の子と女の子の二児の母。父親向けのコラム執筆や、育児に奮闘する母親や父親向けの情報サイトの運営など、教育関連の執筆にも力を入れている。
※このコラムは、「ガッケン!ハッケン!学研ゼミ 保護者のよみもの ハッケン!みっけ!」に掲載されていたものです。
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