他人と接するのが少し不器用な、でも本当はとても優しいおばあさんの物語。人と接する勇気と、自身を変える気持ちを伝えるファンタジー。
『へんくつさんのお茶会 ~おいしい山のパン屋さんの物語~』
小人や動物が訪れる、小さなパン屋の優しい物語。読書と食欲の秋にいかが?
お話のあらすじ
ぽっこり山のふもとに、一軒のおいしいパン屋さんがありました。
パンを焼いているのは、気難しく、へりくつばかり言うおばあさんで、みんなからは、“へんくつさん”と呼ばれています。
へんくつさんのパン屋は、午後三時になると閉まってしまいます。
その時間には、ほとんどのパンが売り切れてしまうからです。
それから、かたづけをする前に、まず一休みです。
ティーポットとカップを、ガラスまどの下の丸テーブルに運び、その日の気分のお茶を三時にゆっくり飲むのが、へんくつさんの楽しみです。
「ああ、ひとりは気楽でいいねえ。ひとりなら、わずらわしいことは起きない。わたしゃ、しずかに、おだやかにくらしたいのさ」
とぶつぶつつぶやきます。
そんなひとりを好むへんくつさんですが、小人の女の子や、どろぼうの青年、年老いた動物など、さまざまな出会い・別れを重ねるうちに、少しずつ変わりはじめ…。
文章は、『ばあばは、だいじょうぶ』(童心社刊。2017年課題図書選定、のちに映画化される)などで人気の児童書作家 楠章子さん。
絵は、『わたしの塗り絵Book憧れのお店屋さん』『わたしの塗り絵POST CARD BOOK 森の少女の物語』(ともに日本ヴォーグ社)や「ぼくのまつり縫い」シリーズ(偕成社)など、幅広い年代に人気のイラストレーター 井田千秋さん。
おいしそうな季節のパンや、人の心の機微が、やさしい文体と絵であらわされています。
へんくつさんは、あなたの近くにもいるかも…?
昨今、あらゆるところでコミュニケーション能力を強く求められます。
けれど、みんながみんな、コミュ力が高いわけではなく、なかには苦手な人もいたりします。
このお話は、他人と接するのが少し不器用な、でも本当はとても優しいおばあさんの物語です。
あなたの身近に、少し近寄りがたいと感じる人はいませんか?
もしかしたら、その人はへんくつさんのように、ちょっと伝え方がうまくないだけで、内面は見かけとちがうかもしれませんよ。
そして読者のなかには、へんくつさんのように、コミュニケーションがうまくない人もいるかもしれません。少しだけ勇気を出して、自分の気持ちをすなおにあらわしてみては? なにかが変わる、きっかけになるかもしれませんよ。
これは、人と接する勇気と、自身を変える気持ちを応援する物語。
子どもはもちろん、おとなにもおすすめの1冊です。
※本書は、進研ゼミ小学講座「チャレンジ3年生」(2011年8月号別冊付録(株)ベネッセコーポレーション発行)にて初出掲載されたものを加筆・修正した作品です。
商品の紹介
■書名:『へんくつさんのお茶会 ~おいしい山のパン屋さんの物語~』
■作/楠 章子 絵/井田千秋
■発行:学研プラス
■発売日:2020年10月29日
■定価:本体1,300円+税