子どもが勉強ぎらいになってやる気を失わないよう、早い段階からお母さんがコーチにつき、子どもの勉強を見てあげましょう。
プロのスポーツ選手でも、チームに入団した当初は手取り足取り教えてもらうものです。そして上達して自信がついてから、自分ひとりで練習するようになるのです。
勉強もまず、「このやり方でやっていれば、ほかの子に勝てるよ」という方法をお母さんが子どもに教えてあげましょう。はじめになんの対策もせず、できなくなってからあわてて教えるようでは遅いのです。
では、子どもに授業が“わからない”という経験をさせないようにするにはどうしたらよいでしょうか。
それは、前にお話しした先取り学習を、お母さんがそばについてしっかりと行うことです。もしそれでも子どもが授業についていけない場合は、そのまま放っておかないで、できるだけ早いうちにフォローをしましょう。
子どもが「わからない」と言っている箇所をわかるまで何度も丁寧に説明するなど、学校とは違う教え方を試してみるのです。
そして、子どもが理解できたときには「先生の教え方がちょっと難しかったね」などと言い、“わからなかったのは子どもの頭が悪いわけではない”ということを強調しましょう。子どもはお母さんの言葉に安心し、自信を取り戻すはずです。
次に、テストで点が取れない子どもに対しては、まず“どこができないのか”を見つけてあげることが大切です。子どもが理解できていないポイントはどこか、見極めることから始めましょう。
方法としては、お母さんがそばに付き添いながら、できない科目のドリルなどをやらせてみるとよいでしょう。やはり実際に問題を解かせてみることがいちばんです。
たとえば、逆上がりができない場合であれば、実際にやらせてみることで、「腕の力の入れ方が弱いよ」「足をけり上げる角度がおかしいね」など、具体的に直すべきところがわかります。
勉強も同様で、実際に問題を解かせることで、「漢字の“左”と“右”を逆に覚えているね」「計算途中の繰り上がりを忘れているよ」などが見えてくるのです。
そうして「このやり方ではできないから、こっちのやり方でやってみよう」「この部分は少し練習が足りなかったね。もう一度復習しよう」などと、子どもに点が取れなかった理由を合わせて教えてあげましょう。
まさに“つきっきりの指導”です。これはお母さんしかできないことでしょう。
子どもが学校の授業を楽しんでいるかどうか、理解できているかどうか……。子どもの勉強の習熟度がよくわからない場合は、とりあえず、心配な科目の問題を目の前でやらせてみましょう。
解く姿をそばで見ていれば、どこで鉛筆が止まるかもわかります。それに、問題なくちゃんとできているのであれば、無理に教える必要はありません。子どものやる気を見守りましょう。
子どものやる気は、ほんのちょっとした工夫で引き出すことができます。
たとえば、「夕食後のダイニングテーブルで勉強を始める」「勉強が乗ってきたときは時計を見えない位置に置く」「目標を小分けにして“やれそう感”を高める」「友だちと一緒に勉強する日を決めておく」「興味・関心のある分野の本を月に一冊ずつ読む」
などです。
子どもには個人差があるので、その子どもに合ったやり方を探し、試しましょう。くわしくは、拙著『和田式勉強のやる気をつくる本』(学研教育出版刊)を参考にしていただければと思います。
常に「ある方法でダメなら、別の方法を。それもダメなら、また別の方法を」と新しいやり方を模索していくとよいでしょう。
和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。
作品紹介
「勉強が得意な子」をつくるお母さんの戦略
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