心理学は、人間の行動と心およびその働きを明らかにする学問です。もちろん、人の心の動きは人それぞれに違いますが、基本的な構造は多かれ少なかれ共通していますし、全員に共通する事柄もたくさんあります。
二十世紀の有名な心理学者カール・ユングは、「内向型」「外向型」という言葉を使って人格の分類をしました。ユング自身は内向型でした。内向型は自分の内面にある思考や感情に惹きつけられ、外向型は対外的な人付き合いや活動を好む、と説明した最初の人間でもあります。
もちろん、百パーセント内向型とか百パーセント外向型とかいう人間はいない、とユングは言いました。こうした傾向は、スペクトラムと呼ばれるもので説明されます。わかりやすくするために、スペクトラムを長い定規にたとえてみましょう。定規の一方の端が、もっとも強い外向型だとすると、反対の端は、もっとも強い内向型ということになります。その真ん中あたりに位置する人もいて、心理学では、これを「両向型」と呼びます。
しかし、どちらかの端に寄っている人も、両方の特性が少しは混じっているのです。内向型の多くは、親しい友だちと一緒にいるときや、自分が関心を持っているテーマで話し合っているときは、そうでないときよりも外向的にふるまうと言います。また、たくさんの人に囲まれているのを好む外向型も、そのほとんどは、気持ちをクールダウンさせる時間が必要だと言います。
詳しい話をする前に、自分が内向型・外向型スペクトラムのどのあたりに位置しているのか、チェックしてみましょう。どの質問も、どう答えるのが正しいとか間違っているとかいうことはありません。次の設問に、自分が当てはまるかどうかを答えていってください。
□ グループの中にいるより、ひとりかふたりの友だちと一緒にいるほうが好きだ。
□ 自分の考えは、どちらかというと文章に書いて伝えたい。
□ ひとりで過ごす時間が好きだ。
□ 軽い世間話より、ものごとを深く話し合うほうが好きだ。
□ 人の話を聞くのがうまい、と友だちによく言われる。
□ 人数の多いクラスより、少ないクラスのほうが好きだ。
□ 争いごとは避けたい。
□ 仕事や作品を人に見せるのは、完全にできあがってからにしたい。
□ 勉強や仕事が一番はかどるのは、ひとりきりで取り組んでいるときだ。
□ 授業中、先生に当てられるのは好きではない。
□ 友だちと遊んで楽しかったときでも、そのあとはぐったりしてしまう。
□ 誕生日は大きなパーティーを開くより、仲のいい友だちや家族にお祝いしてもらうほうがいい。
□ 学校で、自分ひとりでやる大きな課題を出されても、苦にならない。
□ 自分の部屋で過ごす時間が長い。
□ 基本的に、リスクのあることはしたくない。
□ なにかのプロジェクトに取り組んだり、スポーツや楽器の練習をしたり、クリエイティブな作業をしたりするとき、何時間も休みなくそれを続けても飽きることがない。
□ 考えてからしゃべるほうだ。
□ あまり親しくない相手とは、電話でしゃべるよりメールをするほうがいい。
□ みんなに注目されるのはすごく苦手だ。
□ 質問に答えるより、質問をするほうが好きだ。
□ しゃべりかたが穏やかだとか、恥ずかしがり屋だと、人によく言われる。
□ もし選べるなら、スケジュールでいっぱいの週末より、まったく予定のない週末を過ごしたい。
(これは科学的な裏づけのあるものではなく、非公式なテストです。どの質問も、現代の研究家が内向型の特性として認めている事柄をもとに作られています)
「当てはまる」と答えた設問の数が多ければ多いほど、強い内向型だと言えます。「当てはまらない」のほうが多ければ、外向型の性質が強いと考えられます。「当てはまる」と「当てはまらない」の数が同じくらいなら、両向型でしょう。
どれであってもかまいません。快適に暮らしていくための鍵は、自分がどういうタイプかを知ることにあるのです。「生まれついての内向型」や、「生まれついての外向型」という人もいますし、そうした特性は自分の子どもに受け継がれていきます。とはいえ、遺伝子ですべてが決まるわけではありません。
どのタイプと判定されたとしても、人格や個性は一生変わらないものではありません。年月とともに形作られ、変わっていく部分もあるのです。生まれつきものすごくシャイで物静かな人が、スタジアムでテイラー・スウィフトのように歌うようになる可能性はないかもしれませんが、多くの場合、ある程度までは自分を変えることができます。ゴムひもが伸びるのと同じようなものです(だから限界もあります)。
どういう状況で力を発揮したりリラックスしたりできるか、ということがわかれば、気持ちにゆとりができるでしょう。そうすれば、自分にとってよりよい選択をすることができるし、自分が落ち着いてできる活動に集中することもできます。ここぞというときに苦手な領域に足を踏み入れて、自分にとって大切な仕事や勉強、あるいは大切な人のためにがんばることもできるはずです。
そういう生きかたがどんなにすばらしい力を与えてくれるか。わたしが声を大にして言いたいのは、そしてこの本で訴えたいのは、まさにこのことなのです。まわりの人たちから認められるのはうれしいものですが、なにより重要なのは、自分で自分を認めることなのです。
(※この連載は、毎週木曜日・全8回掲載予定です。次回は3月22日掲載予定です。)
スーザン・ケイン
プリンストン大学、ハーバード・ロースクールを卒業。<静かな革命>の創設者のひとり。著作の『Quiet』(邦訳『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』、古草秀子訳、講談社)は、世界40の言語に翻訳され、『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーになる。出演したTEDの動画の視聴回数は1800万回を超える。「思慮深いリーダーシップ」で、ハーバード・ロースクールのCelebration Award を受賞。『Inc.』誌により、「世界のリーダーおよびマネジメント専門家50人」に選ばれた。現在、夫とふたりの息子とともに、ハドソンリバーバレーに在住。
グレゴリー・モーン
作家。ビル・ナイとの共著により、『Jack and the Geniuses 』シリーズをはじめとする子ども向け読み物を多数発表している。
エリカ・モローズ
『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーとなった多くの子ども向け読み物の出版に、執筆協力者または共著者として関わっている。作家のほかに、助産師、陶芸家の顔も持つ。ニューヨーク在住。
【訳】西田 佳子 (にしだ よしこ)
名古屋市生まれ。東京外国語大学英米語学科卒業。英米文学翻訳家。訳書に〈警視キンケイド〉シリーズ(講談社)、『赤毛のアン』『小公子セドリック』『すごいね! みんなの通学路』(いずれも西村書店)、『ホートン・ミア館の怖い話』(理論社)、『テラプト先生がいるから』(静山社)、『わたしはマララ』(学研/共訳:金原瑞人)、『僕には世界がふたつある』(集英社/共訳:金原瑞人)などがある。
作品紹介
静かな力
内向型の人が自分らしく生きるための本
全米ミリオンセラー『Quiet(内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力)』のスーザン・ケインによる同テーマの最新刊。
定価:本体1,400円+税/学研プラス