信長が天下に王手をかけることができたのは、行動力にある。
それも並の行動力ではなく、すべてにおいて即、行動したことだ。
信長といえば連戦連勝、戦の天才と思っている人は多い。
ところが信長は、戦に関しては結構負けているのだ。
ただし、信長が卓越していたのは、チャンスに飛びつくスピードが速かっただけでなく、逃げ足も滅法速かったことだ。
いくら負け戦が多くても、それらの多くは小さな戦であり、「これはアカン!」と悟った瞬間に、全速力で逃げれば致命的な負けにはならないのだ。
こんな話を知ると、あなたの勇敢で格好いい信長像が崩れてしまうかもしれないが、ビジネスと同じで攻めるスピードとともに、撤退のスピードも極めて重要なのだ。
私の経営コンサルタント時代にも、大御所の同業者が何度もこう教えてくれた。
「真の勇気とは、よいと思ったことをすぐにやり、悪いと思ったことはすぐにやめることだ」
その大御所の本棚を実際に見せてもらったことがあるが、昭和一桁生まれだったこともあってか、戦争関連の本で溢れ返っていた。
彼は百戦錬磨の経営コンサルタントであると同時に、上場企業の創業者でもあったから、信長の特性を持ち合わせていたのだろう。
今でも私は「勇気」について、これ以上に的を射た説明を聞いたことがない。
実際に、私の人生において、この指針は数え切れないほど役に立ったし、いくら感謝しても感謝し切れないほどだ。
最後に信長の名誉のために言っておくが、彼は、勝つべき戦は持ち前の速攻力できちんと勝っていた。
(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。3回目の次回は7月3日掲載予定です。)
千田 琢哉 (せんだ たくや)
文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。
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■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/
作品紹介
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