話のきっかけとは難しいものだ。相手と初対面で、趣味も好みもわからないときなど、なにから話し始めればよいのか、わからない人も多いのではないだろうか。
話し方の本を開いてみると、「共通の話題をまず見つけよう」とよく書いてある。
だが、趣味と名のつくものでさえ無数にあるこの世の中で、「共通の話題」に行き当たるのは至難のワザだ。
なかには得意先の心をつかむために、先方の趣味とあらば囲碁でも将棋でも苦心して習得すべし、などと書いてある本もある。だが、得意先が囲碁三段の腕前だったとしたら、追いつくのに何年かかるか知っているのだろうか。
また、共通するものを見つけるためにわざとらしい手を使うのも、相手からすると見え透いていて、煩わしく感じることもある。
研修で出会った営業マンは、顧客に女性が多いことから占星術の本を読み、「あなたはなに星人?」などとやって心をつかもうと必死だったが、あまりうまくいっていないとこぼしていた。わざとらしい手口は客にすぐ伝わり、売り込もうという気持ちが見えてしまう。
同じ理由で、血液型もきっかけの話としては最低だ。
だが、誰とでも、どこででも共通する話題は必ずある。それは「天気」と「カレンダー」だ。
「今日の午後は雨みたいですね」
「夜は雪になりそうですね」
「もう春なんですね」
「今日は金曜日ですね」
「もう師走ですね」
「今日は節分ですか」
これならわざとらしくないし、なんと言っても互いに話題を共有することができる。こちらがそう話しかければ、向こうだって「そうですね」と返してくるだろう。
こんなことなら誰でも知っているし、わざわざ教えてもらうほどのことでもない?
いや、ここからが、この20年に私が会得したワザの出る番となる。
天気とカレンダーは
どんな相手とでも共有できる。
話のきっかけに活用しよう。
野口 敏 (のぐち さとし)
1959年熊本県生まれ。関西大学卒。 平成元年より、話し方教室TALK&トークを大阪、東京、名古屋で主宰。コミュニケーションを感情という観点から深く研究。「今日習った人が、今日少しうまくなる」がモットー。 温かくユーモアにあふれた指導が幅広い支持を得て、これまでに指導した生徒は5万人を超えている。 著書に『誰とでも15分以上会話がとぎれない!話し方66のルール』(スバル舎)、『一瞬で人に好かれる話し方』(学研パブリッシング)、『誰からも大切にされる女性の話し方』(経済界)など多数ある。
作品紹介
一瞬で心をつかむ話し方
「気持ち」を伝えて「信頼」を勝ち取る74のテクニック
会話は「言葉」のキャッチボールではなく「気持ち」のキャッチボール!5万人を話し上手にしたトップコーチの心を伝える会話術。
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