声は音のエネルギー 「重さ」や「速度」や「飛距離」がある
浜田真実『9割の人が知らないプロの常識で説得力のある声をつくる』セレクション
1回目で、声を「音」と捉えて聴き取ってみると、豊かな聴き取り方ができるようになるとお伝えしました。そのとき気づかれたかもしれませんが、声にはそれぞれ「重さ」や「密度」があるように感じられませんでしたか?
例えば、ボールをイメージしてください。ボールといっても、ビニールでつくられた軽いビーチボールもあれば、バスケットボール、野球のボールなど大きさも重さもさまざまです。それらのボールを同じ強さで投げたとき、速度や飛距離はボールの質によって変わります。
声も、似たような捉え方ができます。声は空気の振動で伝わるエネルギーです。空気を振動させる波長、周期、振幅、音の圧力、速度などを持っています。声が発せられる身体の状態や使い方、息の量や強さによって、声の圧力や速度、飛距離などが変わるのです。
怒鳴り声は、身体に当たると痛い感じがします。音の圧力も感じますね。また、ピンポイントで身体にグサッと突き刺さるように感じる声などもあります。悲鳴や金切り声は胸から上のあたりを切り裂くように感じますし、密度が薄く、口から出た途端に足元にポロンと落ちるような声もあれば、遥か遠くまでシュッと飛ぶ声もあります。
声は音のエネルギーなのだと気づいていると、そのエネルギーを的確に相手の元に届けるためには、どのように身体を使ったらいいのかという「身体をコントロールする」ことに意識が向きます。
説得力のある声やコミュニケーションのためには、思考や感情ばかりを優先させず、声の質や身体の使い方を意識したほうが、より的確に相手には伝わるのです。
私は、広い会場で大人数のボイストレーニングを行うときに、壁際に等間隔で四~五人の参加者に並んでもらいます。これをAチームとします。Aチームの人たちは壁に向かって立っているので、他の参加者に背中を向けている状態です。その他の参加者からBチームを選びます。Bチームの人は、Aチームのひとりをターゲットに決めて、反対側の壁際から背中に向かって、「おーい」と呼びかけます。呼びかける人と受け取る人の間は、五~六メートルぐらいの距離だと想像してください。
的確に届く声で呼びかけると、ターゲットにされた人は背中を向けていても、「私を呼んでくれた」とわかって振り向きます。それは、背中に声が当たったような感じがするからです。ターゲット以外の人たちは、あきらかに、自分以外の人が呼びかけられたとわかります。
でも、Bチームの人がポロンと足元に落ちるような、距離を感じられない声で呼びかけると、Aチームの人たちは誰も振り向きません。気合を入れて大きな声で叫んだとしても、声が拡散したように感じられると、同じく誰も振り向きません。全員が呼びかけたら、AチームとBチームの役割を交代します。
このワークは、声を音として身体で感じ取ることが体験できるのと同時に、相手に向かって的確に声を届けるための練習ができます。
浜田 真実 (はまだ まみ)
ボイスバランストレーナー。マミィズボイススタイル主宰。 歌と朗読と言葉をつむぐ・まほろカンパニー代表。
勝新太郎氏主宰の「勝アカデミー」、TBS「緑山塾」などの俳優養成所を経て、テレビ、舞台、映画などに出演。1987年、シャンソン、カンツォーネを中心にしたレパートリーで歌手デビュー。東京都内のライブハウス、銀巴里、渋谷ジァンジァンなどにレギュラー出演する。2004年、心と身体をつなぐ総合ボイストレーニングクラス「マミィズボイススタイル」をオープン。呼吸法・心理学・歌・朗読・ダンスなどを取り入れた独自のボイストレーニングプログラムを考案。「ボイスバランスメイキング」「ケアボイスワーク」と名付けられたメソッドは、コミュニケーションと声を自由にし、心と身体を豊かに育むと、教育機関・ビジネス研修・福祉施設のデイケアプログラム・セミナー・講演などでも高い評価を得ている。
■マミィズボイススタイル
http://koetokokyu.com/
■まほろカンパニー
http://mahoro.jp.net/
作品紹介
9割の人が知らないプロの常識で説得力のある声をつくる
コミュニケーションに自信がつく自然な発声と話し方のコツ
声のプロは耳と目を上手に使って発声しています。少し勇気とプロのコツで声を磨き、声をコミュニケーションの武器にしましょう。
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