幸せの種は自分の中にある

緑川明世『尼僧が教える 心の弾力のつくり方』セレクション

更新日 2020.07.22
公開日 2018.04.23
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外に幸せを求めても、
永遠に心は満たされません

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 生きとし生けるものすべてが幸せになるのが、仏教の目指すところです。
 そのためには、まず自分の中に幸せの種があると気づくこと。
 そして、その種を育てていくことがとても大切です。
 物質や人や状況で、自分を満たそうとすると、いつまでも外にあるものを追いかけなければなりません。
 でも私たちは、どうしても幸せを自分の外に求めてしまいがちですね。
 新しい服やバッグ、車や家。パートナーや憧れの仕事、理想の人間関係。欲しいと思っていたものを手に入れたら、その瞬間は満足するけれど、それもつかの間。すぐに、次の新しいものが欲しくなります。
 何を得ても、「もっと、もっと」と思うのが人間です。欲望にはキリがありません。
 
 出家前、まだお化粧をしていた頃のことです。
 あるとき、眉をおしゃれだと思う形に整えてみました。「よしよし、きれいにできた」と思って鏡を見ていたのですが、すぐに落ち着かない気分になりました。
 形が変わった眉と、目とのバランスが合わなかったのです。
 それで、新しい眉に合わせてメイクするために、マスカラが必要になりました。
 でもそこで、ハタと気づきました。マスカラをしたら、次はきっとチークや口紅を変えたくなるはずです。欲望はどこまでいってもキリがありません。
 出家してお化粧をしなくてすむようになり、ラクだな、と思いました。

 大乗仏教では、私たちのいのちは清らかでけがれなく(清浄で)光り輝いていると考えます。その光が汚れることは絶対にありません。
 自分のもっている光に気づけば、外から何かを得ることに、やっきにならなくてもよくなります。
 その光を輝かせていけば、自然に満たされていくからです。
 それが、自分の中にある幸せの種を育てていくということです。
 でも、私たちの日常では、さまざまな感情や思考が揺れ動き、迷いや悩みも多いですね。だから、日々暮らしているだけで、どうしても心に垢やホコリがついてしまいます。
 そうすると、本当はいきいきと働く心の稼働率が、どんどん悪くなっていきます。
 それで、本来の清らかな輝きが曇ってしまうのです。
 その曇りを取り除いて、自分がもっている輝きを取り戻すこと。
 生まれ持ったいのちを生かすこと。それが、私たちの使命です。

(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。次回は4月30日掲載予定です。)

 

緑川 明世 (みどりかわ みょうせい)

作品紹介

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