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外に幸せを求めても、
永遠に心は満たされません
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生きとし生けるものすべてが幸せになるのが、仏教の目指すところです。
そのためには、まず自分の中に幸せの種があると気づくこと。
そして、その種を育てていくことがとても大切です。
物質や人や状況で、自分を満たそうとすると、いつまでも外にあるものを追いかけなければなりません。
でも私たちは、どうしても幸せを自分の外に求めてしまいがちですね。
新しい服やバッグ、車や家。パートナーや憧れの仕事、理想の人間関係。欲しいと思っていたものを手に入れたら、その瞬間は満足するけれど、それもつかの間。すぐに、次の新しいものが欲しくなります。
何を得ても、「もっと、もっと」と思うのが人間です。欲望にはキリがありません。
出家前、まだお化粧をしていた頃のことです。
あるとき、眉をおしゃれだと思う形に整えてみました。「よしよし、きれいにできた」と思って鏡を見ていたのですが、すぐに落ち着かない気分になりました。
形が変わった眉と、目とのバランスが合わなかったのです。
それで、新しい眉に合わせてメイクするために、マスカラが必要になりました。
でもそこで、ハタと気づきました。マスカラをしたら、次はきっとチークや口紅を変えたくなるはずです。欲望はどこまでいってもキリがありません。
出家してお化粧をしなくてすむようになり、ラクだな、と思いました。
大乗仏教では、私たちのいのちは清らかでけがれなく(清浄で)光り輝いていると考えます。その光が汚れることは絶対にありません。
自分のもっている光に気づけば、外から何かを得ることに、やっきにならなくてもよくなります。
その光を輝かせていけば、自然に満たされていくからです。
それが、自分の中にある幸せの種を育てていくということです。
でも、私たちの日常では、さまざまな感情や思考が揺れ動き、迷いや悩みも多いですね。だから、日々暮らしているだけで、どうしても心に垢やホコリがついてしまいます。
そうすると、本当はいきいきと働く心の稼働率が、どんどん悪くなっていきます。
それで、本来の清らかな輝きが曇ってしまうのです。
その曇りを取り除いて、自分がもっている輝きを取り戻すこと。
生まれ持ったいのちを生かすこと。それが、私たちの使命です。
(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。次回は4月30日掲載予定です。)
緑川 明世 (みどりかわ みょうせい)
作品紹介
苦しみから自由になる「道」がある――。心をゆるめ、心身をすこやかに育む、人生100年時代に役立つ生き方のヒント。
定価:本体1,300円+税/学研プラス
バックナンバー
- 何歳からでも、よい習慣を始められる
- 1分間の瞑想で、心が元気になる
- 最初の一歩を踏み出せるのは、自分だけ
- 人生は、リミットレスで充実させることができる
- 幸せの種は自分の中にある
- 心は、逆境をはね返すしなやかさをもっている
- あなたの心には、 決して折れないしなやかさがあります