著者インタビュー(第2回) 「当時のデモテープについて」

『プレイバック制作ディレクター回想記 音楽「山口百恵」全軌跡』

更新日 2019.08.07
公開日 2011.03.05
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【川瀬泰雄プロフィール】
 東京音楽出版(現ホリプロ)入社後、山口百恵の引退までプロデュース。そのほか井上陽水、浜田省吾等のプロデュースも担当、現在まで約1600曲をプロデュース。

 山口百恵さんの楽曲制作を、デビュー直後から引退まで担当した著者の川瀬泰雄さん。
 特に力を入れたのは、楽曲や詞を書く新しい作家の開拓だったそうです。
 そのアーティストの方々によって、「横須賀ストーリー」「秋桜(コスモス)」など、たくさんの名曲が誕生していきました。

 当時は、作曲をお願いした方々から曲が出来上がってくると、歌を録音したデモテープが、ディレクターの川瀬さんの元に届けられていました。曲の原点であるこのデモテープは、サウンドアレンジが一切されていないまっさらな状態です。

 本書を書くにあたっては、このデモテープが大変貴重な資料となりました。

作曲をされた方による当時のデモテープが、御自宅から数多く出てきたそうですが?

:これはすごかったですね。
 百恵さん用に宇崎竜童氏の作ったほとんどの曲のデモテープ、谷村新司氏、さだまさし氏、浜田省吾氏、井上陽水氏、ジョニー大倉氏などのカセット・テープがあちこちから出てきました。

全部でどれくらいあったのですか?

:カセット1本に数曲入っているのもあったので、百恵さん用だけでも曲数にして80曲くらいはありました。ほかのアーティスト用の宇崎氏のデモテープや浜田省吾氏のソロ・デビュー用のデモテープなどを合わせると全部で200曲くらいはあったと思います。

宇崎さんのデモテープで、印象に残ったものはどんな曲でしょう?

:印象に残ったものは、アルバム『17才のテーマ』用として宇崎氏から最初にいただいた「横須賀ストーリー」のデモテープです。最終的な形になる前の弾き語りのテープを聴くと、もともとのイントロはセブンスのコードで盛り上げていき歌に入るという形の曲だったのだなァと懐かしく思います。

浜田省吾さんのデモテープは、ご本人が歌った弾き語りですか?

:もちろん本人の弾き語りです。浜田省吾氏のデモテープは別の歌詞がついていたり、メロディの印象的な部分だけ乗りのいい歌詞がついていたりしていました。

谷村新司さんのデモテープはどうでしたか?

:曲名をあげることはできませんが、そのデモテープで戴いた曲の後ろに、その曲が出来上がるまでの微妙にメロディの違ったものを、谷村氏が何回も歌い直している音が消し忘れてそのまま残されていました。まるで曲が出来上がるまでのドキュメンタリーを見ているような気がしたのを覚えています。

それらの貴重なデモテープをあらためて今聴くことで、どういうことが思い出されましたか?

:作曲家が曲を作られた時から30年以上経ったとは思えない生々しさが、テープから聴こえてきました。そしてレコーディングされた時の萩田光雄氏を筆頭としたアレンジャーの苦労や素晴らしいアイデアや才能を数多く発見できました。

 
編集部:名だたるアーティストの方々による当時のデモテープは、日本歌謡史の中の貴重な財産といえるでしょう。生々しい当時の記録、デモテープについてのお話はまだまだ続きます。

 次回のアップを乞うご期待!

 

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