一緒に遊園地でたっぷり遊ぼう! 絵本作家・関根知未さん むしむしインタビュー

『ピーナとナッツのむしむしゆうえんち』

更新日 2024.07.02
公開日 2024.06.27
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 色鉛筆のカラフルな色づかいや、優しい雰囲気、ユーモアたっぷりのかわいいキャラクターで人気急上昇!の絵本作家・関根知未さん。今月刊行された『ピーナとナッツのむしむしゆうえんち』は、ユニークな虫たちと一緒に、遊園地でたっぷり遊んだ気持ちになれる絵本です。虫の特性を生かしたゆかいなアトラクションの緻密な描き込みページは、「絵さがし遊び」としても、わくわくどきどき楽しさいっぱい! 関根知未さんの「むしむしインタビュー」を通じて、その魅力に迫ります!

内容紹介

 森のこびと、ピーナとナッツの家の近くに「むしむしゆうえんち」ができました。遊園地には楽しい乗りものがいっぱい。チョウのアスレチック広場に、クモのパラシュート、アリの巣迷路。バッタのジャンプライドから落っこちたり、ダンゴムシのコロコロレース場に飛びこんだり、ふたりは大はしゃぎ! みんなも一緒に、ゆかいな「むしむしゆうえんち」でたっぷり遊ぼう!

▲Gakken 本社でのインタビュー。今日は絵本制作のお話をたっぷり伺います。

▲できたてほやほやの見本を手に取る瞬間は、うれしい気持ちとどきどきでいっぱいです。

 

虫の絵本を描いたきっかけは?

絵本棚に、虫の本が1冊もない!?

 今現在子育て中で、毎日、3歳と5歳の元気な男の子、二児の成長に向き合っています。絵本も一緒に読んでいるのですが、ある日、自分と子どもたちの絵本棚を見て、そこに、虫の本が1冊もないことに気がつきました。そのときどこかで、わたし自身が虫を苦手だと思っていることが、子どもたちにも同じような苦手意識をもたせたり、世界をせばめたり、影響しているのではないかとはっとさせられて、申し訳なく感じてしまって……。

 

もともとは大好きだった虫なのに……

 実はわたし、もともと子どものころは、虫が大好きだったんです。小学生くらいまでは、何でもよくつかまえて、虫かごに入れて集めて遊んでいました。でも、あるとき、虫が苦手になってしまったきっかけがあって、それ以来、逆に虫に強い苦手意識ができたまま、大人になってもその苦手意識が克服できていなかったんですね。

▲虫が苦手とは思えないほど、愛情たっぷり色の塗り分けが指定されている虫のキャラたち

だったら、わたしでも楽しめる虫の絵本を、自分の手で描きたい!

けれど、自分が苦手だと思うものの中にも、子どもたちがどきどきわくわく世界を広げ、興味をもって手を伸ばしていけるものがたくさんあるのかもしれないと思ったんです。それなら、むしろ、虫が苦手なわたしでも楽しいって思える虫の絵本、虫が苦手な人でも親子で一緒に読むことができる絵本があったら、自分の手で描きたい!って思ったのが、虫の絵本に取り組んだきっかけです。

▲表紙のきのこのメリーゴーランドにも、かわいい虫がいっぱい。みんな楽しそう!

遊園地というテーマについて

虫の特性を生かしたアトラクションのアイデアが次々と!

 虫の絵本に取り組みだして、まず最初に、ユニークな虫の特徴や、フォルム、特性を生かした、おもしろいものが描きたいなって思いました。すると、ダンゴムシがコロコロころがって競うレースや、クモの糸が使われたダイビングパラシュートなど、ゆかいな乗りものやアトラクションのアイデアが、次々頭に思い浮かんできたんです。そこで、虫の遊園地をテーマにしようと決めて、ここでしか描けない、いろいろな乗りものやアトラクションをたくさん登場させようと思いました。

遊園地は日常から飛び出せる、夢いっぱいの場所

 遊園地は、大好きな場所。日常からぽんと飛び出せる夢いっぱいの世界。魅力的な乗りものやアトラクションに胸おどりますよね。子どものころは、スリリングでスピード感のあるジェットコースターやフリーフォールも大好きでしたが、今では、小さな子どもと一緒でも安心して笑顔で乗ることができる、平和でやさしくて、ほのぼのとしたアトラクションが好きです。だから、むしむしゆうえんちの中でも、ほのぼの楽しいアトラクションや乗りものをたくさん描いていますね。

▲まるでイタリアのヴェニスのような、優雅なアメンボート

何回見ても発見がある、緻密な見開きには苦労もあった……

 今まで絵本を描くときは、まず描きたいシーンのビジュアルが出発点となり、それからお話を考えていました。いつもはお話を作るのに苦労して時間がかかっていたのですけれど……。今回の『むしむしゆうえんち』では、アトラクションアイデアをつなげて、どんどんお話の展開がふくらんでいきました。

 けれど、逆にそれぞれのアトラクションをいかに魅力的に描くか苦心しました。たくさん手を動かしながら、実際ゆうえんちに取材にもいって、構図を工夫したり、緻密な描き込みを繰り返したり、ラフをまとめることに、とても時間がかかりました。

 ラフが今までで一番大変だったこともあって、見開き1ページ1ページに、それぞれ思い入れがあります。

一番気に入っているのは、入り口を抜けてすぐのお店のシーン

 特に、入り口を抜けてすぐのお店のシーンは、一度これだと思うラフが完成したあとに、最初から全部描き直したものです。文字がまだ読めない子も、少しずつ文字が読めるようになった子も、どちらの子どもも、見開きの中のひとつひとつのお店に没入して楽しんでもらえるように、さらにわかりやすくしたいと、初めから構図を大きく変更して、一から描き直しました。その分、出来上がったときの喜びもひとしおで、一番気に入っています。擬態が上手な虫たちの出演する忍者屋敷や、オニヤンマのおにぎりまんまやさん、クロホシタマムシマンとルリボシカミキリマンのヒーローショーなど、ひとつひとつ立ち止まって見てくれたら、とってもうれしいです!

▲関根知未さんが一番気に入っている、入り口抜けてすぐのお店のシーン

▼ひとつひとつの過程を経て、丁寧に仕上げられていく


小さなころから大好きなだじゃれ!

くすっと笑えるユーモアや、ピカっとひらめくだじゃれが大好き!

 わたしは、小さいころから、だじゃれ作りやことば遊びが大好きなんです。『ピーナとナッツのむしむしゆうえんち』の絵本の中にも、看板や、お店の店名、アリの巣迷路のお土産など、ちょいちょい、だじゃれを入れてますよ。

▲ガのガ伯が似ガお絵を描いてくれる、似顔絵やさん

▲オニヤンマさんと、あったかまんまをだじゃれにした、おにまんまやさん

中学校の吹奏楽部時代、曲名でだじゃれを作っていた!?

 中学時代も、よく自分でオリジナルのだじゃれを考えては、仲の良い友だちに披露してました。中学では吹奏楽部だったのですが、演奏する曲名をもじって、だじゃれにならないかずっと考えながら、登下校してました。とにかくオリジナルのだじゃれを作るのがとても楽しかったのを覚えています。

 ちなみに吹奏楽部時代、演奏していたのはクラリネットです。お店のシーンの『オケラオーケストラ』の入り口でも、オケラがクラリネットを演奏していますね。

▲クラリネットもチェロもオケラが演奏する、オケラオーケストラ

反応して笑ってもらえるのが幸せ

 友だちの反応がいまいちだったりすると、「今回はいまいちだったな……」なんて反省して、また次のだじゃれ作りに生かすという感じに、ずっとだじゃれ作りを楽しんできました。今度は絵本を通じて、読者のみなさまが、絵本の中に出てくるだじゃれに気づいて、反応して、くすっと笑ってくれたら、幸せでとっても満足です。

主人公・こびとのピーナとナッツの秘密……


ピーナとナッツの誕生にいたるまでの物語

 『むしむしゆうえんち』を訪れる主人公は、誰にしようか、いろんな案が出ました。遊園地に遊びにくるほかの虫と同じ、虫の仲間にしようか、それとも木の実の精にしようか、はたまた果物をモチーフにした妖精にしようか。キャラクターデザインを起こしては、話し合って、またいろいろ描いて、話し合って……。

▲初期のころのこびとのキャラクター案

主人公を虫のキャラクターにしなかったのは……

 そんな試行錯誤を重ねて、ピーナとナッツが今のこびとになったのは、とにかくやっぱりわたし、虫が苦手な人でも楽しく読んでもらえる絵本にしたいという気持ちが大きくて。虫がたくさん登場する絵本なのですが、虫が苦手な人でも感情移入しやすいように、あえて主人公をこびとにすることで、絵本の前のみなさんが、ピーナとナッツのふたりに自分を重ねて、おもしろいゆかいな虫の世界を、一緒にのぞいたり、体験したりしている気持ちになってもらえたらいいなと思ったんです。

 

ピーナとナッツは、ふたりでひとつ、ふたごのピーナッツ

 ピーナッツはひとつの殻に2つぶの豆が入っている双子ですから、ピーナとナッツも、いつも一緒、ふたりでひとつ。これからもピーナとナッツ、ふたり合わせて、読者のみなさんに可愛がってもらえるとうれしいです。

 むしむしゆうえんちの次は、どこに遊びに行こうかな? どんなことに挑戦しようかな?
なんて、ふたりもわくわくどきどき、みなさんとまた会えるのを楽しみにしてますよ。

▲色鉛筆の番号で詳細に塗り分けが決められているピーナとナッツ

おまけ! まだまだ見つかる新しい発見!(絵本を手に取って探してみてね)

関根知未さんの「推し」は、似顔絵やさんのフンコロガシと『ガ』伯

 似顔絵やさんで絵を描いてもらっているフンコロガシと、似顔絵を描いているガの画伯、ふたりそろってイチ推しのキャラクターです。ガ伯が描いている壮大な似顔絵もセットで、とっても気に入っています。奥付の自分のプロフィール部分にも、ガ伯のイラストを使っているので、ぜひ探してみてくださいね。

 

ダンゴムシ女子がうちわを振って応援している『だんごろうさま』は、何番の選手?

 オレンジ6番のゼッケンをつけた、精悍な顔つきで頑張っているのが『だんごろうさま』です。コロコロレースを見つめるダンゴムシ女子の熱い視線は、オレンジ6番ゼッケンにそそがれているんですよ!

▲とろーんと甘いはちみつ。とにかく美味しそうな、関根さんの描く食べものにも注目!

 そのほかにも、まだまだ絵本の中には、迷子になったテントウムシの親子など、いろんなページをまたいで登場するキャラクターや、アリの巣迷路のテレビの巨大砂糖発見!のニュースなど、楽しいサブストーリーがいっぱい散りばめられています。

 絵本を開いて、ページをめくるたび、絵本の中に新しい発見を見つけて楽しんでいただけるとうれしいです! ひとりでも、誰かと一緒にでも、ゆっくり探してみてくださいね。

▼魅惑のアトラクションを描いた緻密な描き込みページは、絵さがしも楽しい!

関根知未さん、すてきなお話をありがとうございました!

 

◆『ピーナとナッツのむしむしゆうえんち』詳しい内容はこちら

 

■関根知未さんの最新刊『ピーナとナッツのむしむしゆうえんち』。子どもたちが大好きな、わくわく楽しい遊園地の物語! 細かな描き込みで何回読んでも新しい発見があり、絵探しとしても遊べる楽しい絵本です。読み聞かせにもお勧め。ぜひお子さんとお読みください。

著者プロフィール

関根知未
千葉県在住のイラストレーター・絵本作家。グラフィックデザイナーとしてアパレルメーカーに勤務後、2009 年よりフリーランスのイラストレーターに。 教材や児童書、雑貨などのイラストや絵本制作を中心に活動中。主な作品に、『ドーナツやさんはじめました』『せんたくやさんのググ』『たべものたろう』(以上、教育画劇)『ミニカーたんけんたい』(アリス館)など。

 

商品概要

『ピーナとナッツのむしむしゆうえんち』
関根知未 作・絵
定価:1,650 円(税込み)
発売日:2024 年 6 月 27 日(木)

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学研出版サイト 

 

 

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