恋を知らぬほど気の毒な人はいない。下重暁子が語る、自らの恋、文学作品の恋

『恋する人生』

更新日 2020.09.11
公開日 2020.09.10
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『恋する人生』書影

『恋する人生』書影

 著者の下重暁子には、20代に惚れぬいた男がいる。
 著者は、あえて失恋という選択肢を選び、84歳となった今でも、その恋をおき火のように守り続けている。『源氏物語』や『平家物語』に登場する女性たち、『たけくらべ』の主人公美登利、歌人の与謝野晶子、明治の文化人などの恋を取り上げ、自身の恋と重ねながら恋愛観、人生観を語る。

“私は惚れぬいて、誰もが考えるであろう結末を迎えず、長い間、全てに封印してただひたすらにおき火を守りつづけたからこそほんとうの恋を知っていると思うのだ。
 ひょっとしたら恋愛至上主義だった私は、私の恋を守りぬくために失恋を選んだのかもしれない。負け惜しみではなく。
 だからこそ今も彼は私の恋人なのだ。
 恋を知らない人ほど気の毒な人はいない。全てを忘れ、自分自身をさえ忘れて相手のことしか考えない。涙の出るほどいい奴だった自分を私は誇らしく思う。見栄や虚飾や損得でつき合う相手を選ぶことしか出来ない人は気の毒だ。我を忘れて恋をしたことがない人ほど、不幸な人はいない。
 ほんとうの恋を知っている人は、それを反芻しながら生きることが出来る。
 帰り花 昔の恋を 反芻す”

(「はじめに」より)

【内容】
 互いの意志を貫いた恋
 エセルと廣吉

 平安時代の恋多き女・和泉式部に惹かれる理由
「和泉式部日記」和泉式部

 拒むことで恋の思い出を守った女
「源氏物語」空蟬

 待つことで、恋を深めた女
「源氏物語」末摘花

 自分の好きなものを愛するということ
「堤中納言物語」虫めづる姫君

 ひとは恋する生き物ゆえ
「とりかへばや物語」二人の姫君

 最後は己の人生に恋をする
「平家物語」妓王

 胸の奥に秘めたる思い
「うたたね」阿仏尼

 恋といふもの命を庇ひ、身を庇うてなるものか
「堀川波鼓」お種

 せつない心の痛み
「たけくらべ」美登利

 恋と共に駆け抜けた人生
 作家・田澤稲舟のこと

 やは肌のあつき血汐にふれも見で
 情熱の歌人・与謝野晶子

※本書は、既刊『物語の女たち』(くもん出版)掲載の10篇に、「情熱の歌人・与謝野晶子」など書き下ろしを加え、加筆してまとめたものです。

商品の紹介

『恋する人生』書影■書名:『恋する人生』
■著:下重暁子
■発行:学研プラス
■発売日:2020年9月10日
■定価:本体1,000円+税

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