先行試し読み 第9回
==================================
「解決策なんかいらないんだよ。
ああやって愚痴言ってストレス解消してんの」
連続ドラマ「アットホーム・ダッド」より。2004年フジテレビ系列にて放送。
マイホーム購入直後にリストラに遭い、不本意ながら主夫をすることになった主人公・和之(阿部寛)が、主夫の先輩の優介(宮迫博之)に言われたひと言。参加したスイーツ教室で、真理江(川島なお美)たちが夫の愚痴を言い合っているのに閉口し、放った「そんなに不満があるなら解決策を考えればいいんだ」というセリフに対して。
==================================
「アットホーム・ダッド」が放映された2004年は、「男女雇用機会均等法」が施行されて約20年が経ち、女性の社会進出が進んだものの、「男は仕事、女は家庭」という、現在ではあまり聞かれなくなった考え方がまだ残っていました。
そんな古風な考え方の主人公が、イヤイヤながら「主夫」をすることになった体験を通して、「夫婦」の在り方や「仕事とは何か?」などを描いたドラマです。
私は、男性と女性の感性や考え方の違いに興味を抱いて、このドラマの中で積極的にテーマとして取り上げました。
その男女の違いをあらわすひとつが、このセリフです。
男性は、悩みを話すとき、解決策を求め、聞くときも具体的な解決策を提示しようとします。しかし女性は、解決策を提示されるとかえって混乱したり、戸惑ったりすることも少なくありません。
「話を聴いてほしい」
女性がそう言うときは、本当にただそれだけでいいのです。それがどんなにくだらなく思える愚痴でも、ただ「そうなんだ」と傾聴する。
そうすると、それだけで、元気になっていくのです。
注目を与えられ受け止めてもらう。それで満ちるのが女性性(女性の特質)の特徴です(もちろん、話を聴いてもらうことは男性にも効果的です)。
かつて、アメリカで生まれた「再評価カウンセリグ」を教えていたことがあります。
ふたりが交互にカウンセラーとクライアントになって、互いに話を聴き合うという手軽な手法ですが、話を聴いてもらうだけで、現実に対する「感じ方」まで変わることがありました。
私の心理の師、心屋仁之助さんがつくった「心屋リセットカウンセリング」にも、「そうなんだ」と、相づちを打って聴く技法があります。
どんなことを言っても批判も否定もされず、ただ話を聴いてもらうことがどれだけ心の癒やしになるか――。
人は、そのままを受け入れてもらえれば、励まされる必要などなく、自動的に元気になっていく力を持っているのです。
ぜひ、今夜、ご家族の話をただ「そうなんだ」と聴いてみてください。助言したくなるのをグッと我慢するのがコツです。
思わぬ会話の広がりになっていくかもしれません。
(次回は、5月19日・10:00頃配信予定です)
*************************
2018年5月18日発売予定
『「誰かのためも大切だけど、そろそろ自分のために生きてもいいんじゃない?」』
著者:旺季志ずか(おうきしずか)/定価:1300円+税
【アマゾン、書店で予約受付中】
「読んだら 感想聞かせてね〜。#そろ生き つけてくれたら読みにいくよ」
(著者・旺季志ずかより)
*************************
旺季 志ずか (おうき しずか)
脚本家。徳島県生まれ。立教大学卒業後、女優を志すも挫折。高層ビルガラス清掃から銀座ホステスまで、50種類の職を経験した豊富な人生経験を生かし、数々のヒットドラマを生み出す。代表作に「屋根裏の恋人」「ストロベリーナイト」「佐賀のがばいばあちゃん」「女帝」など。不幸だった自らの人生を変えるべく心理学や哲学を学んだ、自称「心」オタク。その知見を盛り込んだ著書『臆病な僕でも勇者になれた七つの教え』『虹の翼のミライ』(ともにサンマーク出版)では、「エンタメ自己啓発小説」という独自の分野を確立した。本書は著者初のエッセイとなる。
作品紹介
誰かのためも大切だけど、そろそろ自分のために生きてもいいんじゃない?
「ストロベリーナイト」「屋根裏の恋人」の人気脚本が描く、どん底からすべてを手に入れる女(ひと)の過激な生き方マニュアル!
定価:本体1,300円+税/学研プラス
バックナンバー
- ◆「# そろ生き」先行試し読み 第10回◆「ひとりでいることを楽しめたとき、 ――」
- ◆「# そろ生き」先行試し読み 第8回◆人間ってのは、人の不幸が楽しくて――」
- ◆「# そろ生き」先行試し読み 第7回◆ 「私らって、ほんまはもともと、まん丸なお月様なんよ――」
- ◆「# そろ生き」先行試し読み 第6回◆「好き放題言えばいい、いたぶって自分の優位さを示せばいい――」
- ◆「# そろ生き」先行試し読み 第5回◆「誰かが言った不快なことを伝達するお節介が――」
- ◆「# そろ生き」先行試し読み 第4回◆「女の『誰にも言わない』は――」
- ◆「# そろ生き」先行試し読み 第3回◆「女という生き物の世界では、言いたくないことでも――」
- ◆「# そろ生き」先行試し読み 第2回◆「私、友だちはお互いを大切にできる人だけでいい」
- ◆先行試し読み 第1回◆『「誰かのためも大切だけど、 そろそろ自分のために生きてもいいんじゃない?」』