説得力のある声に必要な「響き」は 骨の振動と「七つの寺院」の 反響で生まれる

浜田真実『9割の人が知らないプロの常識で説得力のある声をつくる』セレクション

更新日 2020.07.20
公開日 2017.09.14
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 相手の心に飛び込むための声のツール。それは、「響き」です。人を動かす力のある声には、必ずこの響きがあり、発言者と受け取り手の間に「共鳴」があります。
 私たちの身体は、声によって振動し共鳴しているのです
 では、それが説得力とどのような関わりがあるのでしょうか?

 音は、空気を振動させて波のように拡がります。洞窟や石で造られた建物の中などで声を出すと、音が反響して聞こえます。エコーがかかった感じ、といえばわかりやすいですね。壁に音が当たって反射して再び聞こえる現象です。
 私たちが声を出すとき、同じことが身体の中でも起こります。音は、硬いものから先に伝わりますので、声帯で発生した音は、首の骨を振動させて身体全体に拡がります。そして身体の中の空間(頭、鼻、口、首、胸、胃、骨盤)で、音が反響するのです。これらの空間を、声の響きのために必要な「七つの寺院」と表現することもあります。
 それでは、実際に確認してみましょう。「あー」と声を出しながら、自分の手のひらで胸や首などに触れてみてください。細かい振動が感じられますね。これは声が、首や胸で反響している証拠です。頭蓋骨でも、骨盤でも音は反響します。
 
 あなたが声を出すときは、肺から出た息が気管を通り、ノドにある声帯の筋肉のヒダが震えることで音声に変換されます。このときの音は声帯原音といい、響きはありません。それが首の骨から背骨、身体全体に振動で拡がり、身体の中の空間に反響することで音が増幅されて、声として外に発せられます。
 これは、アコースティックギターをイメージするとわかりやすいと思います。ギターの弦だけを弾いても音は拡がりませんが、弦を張り、ボディの部分の丸い穴のところで弦を弾くと、木製のボディの内部に音が反響し美しい音色になって周囲に拡がります。弦とつま弾く指が声帯と息、木製のボディが人間の胴体に相当すると考えてください。つまり、私たちの身体は楽器であり、胴体は「声の共鳴板」としての役割も担っているのです
 筋肉のコリや緊張が強いと、振動が制限されてしまいます。ギターのボディの周辺に、硬いゴム状のものをペタペタと貼り付けたような状態です。これだと、美しい響きのある音色は出せません。コリをほぐして力を抜いて声を出すというのは、この響きを抑制しないためにも大事なことです。ひとりひとり骨格も体形も肺や声帯の大きさも違う、世界で唯一無二の楽器を持ち歩いて生きているのが私たち人間なのです。
 実は、この「響き」や「反響」は、私たちに安心感をもたらします。太古の人間が 洞窟で暮らしていたときの記憶がDNAに刻まれているからだという研究者もいますが、真偽のほどはわかりません。ただ、無響室という音の反響をほとんどなくした部屋に入ると、響きがまったく感じられなくなるため、とても不安になります。私も一度だけ体験したことがありますが、自分の声が身体の中だけで聴こえてきて耳が圧迫されたように感じ、人が近くにいるのに距離感も空間の広さもつかめず、怖くなってほんの数分で部屋を出てしまいました。

(※この連載は毎週木曜日・全8回掲載予定です。次回は、9月21日掲載予定です。)

 

浜田 真実 (はまだ まみ)

ボイスバランストレーナー。マミィズボイススタイル主宰。 歌と朗読と言葉をつむぐ・まほろカンパニー代表。
勝新太郎氏主宰の「勝アカデミー」、TBS「緑山塾」などの俳優養成所を経て、テレビ、舞台、映画などに出演。1987年、シャンソン、カンツォーネを中心にしたレパートリーで歌手デビュー。東京都内のライブハウス、銀巴里、渋谷ジァンジァンなどにレギュラー出演する。2004年、心と身体をつなぐ総合ボイストレーニングクラス「マミィズボイススタイル」をオープン。呼吸法・心理学・歌・朗読・ダンスなどを取り入れた独自のボイストレーニングプログラムを考案。「ボイスバランスメイキング」「ケアボイスワーク」と名付けられたメソッドは、コミュニケーションと声を自由にし、心と身体を豊かに育むと、教育機関・ビジネス研修・福祉施設のデイケアプログラム・セミナー・講演などでも高い評価を得ている。

■マミィズボイススタイル
http://koetokokyu.com/

■まほろカンパニー
http://mahoro.jp.net/

 

作品紹介

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