あなたの本質が映し出された ピュアボイスを取り戻そう
浜田真実『9割の人が知らないプロの常識で説得力のある声をつくる』セレクション
「子どもの頃は、もっと自由に声を出していた気がする」
多くの生徒さんは、そう語ります。幼い頃は、他の人からの評価や自分の体裁を気にすることもなく、ノビノビと楽しく声を出していた記憶があるというのです。しかし、成長する過程で得たさまざまな経験が、自分を大人へと育てる一方で、本来のイキイキとした声の輝きを曇らせていたことに気づきます。そして、身体の使い方の癖を見直したり記憶をたどったりするうちに、違和感の正体を見つけるのです。
「こんなことが原因になっていたのか」と、その正体を受け入れることができると、後は改善するためのアプローチを続けるだけです。やがて、自分の中に巣食っていた違和感は解消され、声やコミュニケーションの質は格段に向上します。そのときに発せられる、無理がなく自然で、その人の本質が映し出された声が、冒頭でご紹介した「ピュアボイス」です。
私たちはこの世に誕生したとき、肺呼吸が始まると同時に産声をあげます。大きな声で泣くことによって呼吸は活発になり、全身に血流が巡ります。誕生の瞬間は青白かった新生児の皮膚が、血流によってピンク色に上気し、文字通り「赤ちゃん」になります。私たちは誰でも、人生の始まりに生命力にあふれた声を出しているのです。
また、その声を聴くことで、周囲の人たちの身体(母体のホルモンの変化が促されるなど)や、心の状態も変化します。そんな始まりの声、コミュニケーションの原点の声に、「良い」も「悪い」もありません。始まりの声には、命の輝きがあるだけです。
そして産声の周波数は、どの赤ちゃんでもほとんど同じ四四〇ヘルツです。楽器の調律のときに基準となる、ラ(A)の音も、四四〇ヘルツです。周波数とは一秒間に空気が何回振動するかを表すもので、空気の振動数の単位をヘルツといいます。つまり赤ちゃんの産声は、一秒間に四四〇回空気が振動して発生する音ということです。生まれたばかりの赤ちゃんの声帯は、わずか二ミリから三ミリ。男女の差もありません。私たちは誰でも、四四〇ヘルツの産声から始まっています。ピュアボイスの根幹は、その命の力を表す声にあるのです。
職場で過剰なストレスを受けて、心身の不調を感じた頃から声が出しにくくなったある男性。レッスンを受けた後で、こんな感想を送ってくれました。
「新しい自分の声を獲得するためにボイストレーニングを始めたんですけど、思っていたのと違いました。新しい自分というより、懐かしい自分にかえっていくような感覚です」
声とコミュニケーション力を向上させるためには、まず捉われを捨てて「懐かしい自分」「素の自分」にかえってみる、というのはとても良い方法だと思います。振り出しに戻って見直してみると、使えるツールや宝物はすでにたくさん持っていたと気づかれるかもしれません。
そのひとつが、ピュアボイスの輝きです。
(※この連載は毎週木曜日・全8回掲載予定です。次回は、9月14日掲載予定です。)
浜田 真実 (はまだ まみ)
ボイスバランストレーナー。マミィズボイススタイル主宰。 歌と朗読と言葉をつむぐ・まほろカンパニー代表。
勝新太郎氏主宰の「勝アカデミー」、TBS「緑山塾」などの俳優養成所を経て、テレビ、舞台、映画などに出演。1987年、シャンソン、カンツォーネを中心にしたレパートリーで歌手デビュー。東京都内のライブハウス、銀巴里、渋谷ジァンジァンなどにレギュラー出演する。2004年、心と身体をつなぐ総合ボイストレーニングクラス「マミィズボイススタイル」をオープン。呼吸法・心理学・歌・朗読・ダンスなどを取り入れた独自のボイストレーニングプログラムを考案。「ボイスバランスメイキング」「ケアボイスワーク」と名付けられたメソッドは、コミュニケーションと声を自由にし、心と身体を豊かに育むと、教育機関・ビジネス研修・福祉施設のデイケアプログラム・セミナー・講演などでも高い評価を得ている。
■マミィズボイススタイル
http://koetokokyu.com/
■まほろカンパニー
http://mahoro.jp.net/
作品紹介
9割の人が知らないプロの常識で説得力のある声をつくる
コミュニケーションに自信がつく自然な発声と話し方のコツ
声のプロは耳と目を上手に使って発声しています。少し勇気とプロのコツで声を磨き、声をコミュニケーションの武器にしましょう。
定価:1,400円+税/学研プラス