「ボトルネック」はどこか?

矢都木二郎『麺屋武蔵 ビジネス五輪書』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2017.04.20
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 瓶に入った水を一気に外に出そうとした時に、問題になるのは、首の太さです。どれだけ水が入っていても、首が細ければ、流れをせき止めてしまいます。
 これを「ボトルネック(瓶の首)」と言い、進行の障害となるものを指します。
 仕事では、全体の流れの中で、どこかに「ボトルネック」ができてしまいます。
 できないようにしようとしても、たとえば新人だったり、不慣れなスタッフがいたりすると、そこが「ボトルネック」になってしまうのです。
 ある日は「麺上げ」のポジションだったり、ある日は食券を預かるポジションだったり、ある日は配膳のポジションだったり。
 その「ボトルネック」を意識しながら自分の仕事をするのが、本当に仕事のデキる人です。

 たとえば、麺上げ担当のスタッフがとても作業が速くて、タレとスープが入った丼(どんぶり)にどんどんゆで上がった麺を入れていったとします。
 そこにトッピング担当が、あじ玉、メンマ、チャーシュー、ネギなどを、食券を見ながらのせていくわけですが、新人スタッフの場合などはついていけなくて、どんどん丼がたまってしまいます。
 ゆで上がった麺が入った丼がずらっと並んだら、これはまずい。
 トッピングを待っている間に、麺がのびてしまいます。
 麺上げ担当は、「トッピング遅いよ」とイライラしています。

 問題なのは誰でしょうか。
「ボトルネック」になっているのは、トッピング担当の新人です。
 しかし、麺がのびてしまう原因を作っているのは、麺上げ担当のスタッフでもあります。
 トッピング担当のスタッフの作業が遅かったら、それに合わせたスピードで、麺上げをしないといけません。
 結果として、お客様にいい状態のラーメンを提供できなくなってしまうからです。
 丼がたまればたまるほど、トッピングのスタッフはあせって、さらにミスが出やすくなります。
 どんな仕事も、バトンを渡すリレーのようなものです。次のスタッフが受け取りやすいように、バトンを渡さなくてはいけません。

 調理場の会話に耳をすませると、「ロクマルです」とか「ヨンゴーです」という言葉が聞こえることがあります。
「ロクマル」とは「60秒」のこと。「ヨンゴー」とは「45秒」です。
 麺がゆで上がるまでの時間を伝えているわけです。
「あと60秒でトッピングできますよ」という形で、次のスタッフに連絡をする。
 そうして、お互いの連携を取っています。
 作業が速いスタッフがどんどん作るということでは、お客様のためになりません。
「私の作業は速いだろう」という速さ自慢は、自分が未熟なことを知らせているようなものです。
 それよりも、遅いスタッフを手伝ってあげるとか、スピードを合わせてあげるとか、チームの「ボトルネック」を気にしながら、滞りなく全体の作業が回るように調整をすることが大切なのです。

 

(※この連載は、毎週木曜日・全8回掲載予定です。最終回の次回は4月27日掲載予定です。)

 

矢都木 二郎 (やとぎ じろう)

株式会社麺屋武蔵 代表取締役社長。
1976 年 埼玉県生まれ。
創業者・山田雄のイズムを継承し 常に「革新的で上質」なラーメン店作りを目指す。
ラーメン界の新しい取り組みとして コラボレーション商品を多数提案。ロッテ カルビー 旭酒造といった企業から 自治体や生産者まで 幅広くコラボレートして 多くの革新的なラーメンを生み出す。「チョコレートからフルーツまで ラーメンにできない食材はない」と語り ラーメン店の無限の可能性に挑戦し続けている。
ラーメンの創作活動の傍ら 経営者として 業界の職種的地位向上に尽力。さらに職場環境 待遇の積極的改善 「料理ボランティアの会」を通じてのボランティア活動などを積極的に行っている。

◆主な経歴
・2001 年 株式会社麺屋武蔵 入社
・2003 年 「 麺屋武蔵 武骨」店主に就任
・2004 年 「 麺屋武蔵 新宿総本店」店長に就任
・2013 年 株式会社麺屋武蔵 代表取締役社長に就任

作品紹介

麺屋武蔵 ビジネス五輪書

20年間、業界のトップを走り続けるラーメンの名店・麺屋武蔵。創業以来脈々と伝わる「成功の極意」を2代目社長が語る。
定価:本体1,300円+税/学研プラス

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