「トップ」を走れ

矢都木二郎『麺屋武蔵 ビジネス五輪書』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2017.03.16
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 宮本武蔵は、「何事におゐても人にすぐるゝ所を本(もと)とし」と『五輪書(ごりんのしょ)』で書いています。
「何事においても人に優れることを基本とする」、すなわち「どのようなことであれ相手に勝つ」という意味です。

 ラーメン店は、新規参入がしやすい市場のため、競争が激化しています。
 毎日のように新しい店がオープンし、つぶれていきます。 10年前の「ラーメン本」に掲載されている店の多くは閉店しているという話もあります。
 このような厳しい環境を生き抜いていくためには、「トップになるんだ!」という覚悟を持って、仕事に取り組まなくては勝ち残れません。
 こういう話をすると、必ず突っ込みが入ります。
「2位じゃダメなんですか」
 これは、「ダメ」なんです。
 まず、トップでないと、覚えてもらえません。
 有名なたとえ話ですが、「富士山」はみんな知っていても、日本で2番目に高い山はほとんどの人が知りません。それだけ「№1」というインパクトは強いのです。
 トップになれば、ブランド価値も高まります。
 また、トップは、レースの主導権を握ることができます。2番手、3番手は、常に1番手の出方に対応した動きを取らざるをえません。
 たとえば、F1のレースを走っているとします。トップを走っているマシンは、 コースの中で好きなラインを走ることができます。
 スマートフォンのiPhoneなどもそうです。価格を主導できます。「価格を決められる」というのは、圧倒的に有利です。
 さて、ラーメン業界の中で、麺屋武蔵はトップなのか。
 私は、「トップだ」と思っています。少なくとも、その気概でやっています。
 新宿の店なら、新宿でトップになる。神田の店なら、神田でトップになる。
 局地的であっても、トップを目指す。とにかく、トップという強みを持つ。
 まず、自分の地域。半径100メートルの範囲でもいいからトップになって、そこから、広げていけばいいのです。
 個人の仕事でも「私は皿洗いだったらトップだ」というなら、誰かに認められます。
 声の大きさ、トッピングの美しさ、笑顔……。何でもいいので、他人から「トップだ」と言ってもらえる仕事をする。お店でトップになれたら、次は会社でトップ。
 トップになろうと思えば、いろんな局地でなれるわけです。
 トップを走ることが、勝ち残る極意なのです。

 

(※この連載は、毎週木曜日・全8回掲載予定です。3回目の次回は3月23日掲載予定です。)

 

矢都木 二郎 (やとぎ じろう)

株式会社麺屋武蔵 代表取締役社長。
1976 年 埼玉県生まれ。
創業者・山田雄のイズムを継承し 常に「革新的で上質」なラーメン店作りを目指す。
ラーメン界の新しい取り組みとして コラボレーション商品を多数提案。ロッテ カルビー 旭酒造といった企業から 自治体や生産者まで 幅広くコラボレートして 多くの革新的なラーメンを生み出す。「チョコレートからフルーツまで ラーメンにできない食材はない」と語り ラーメン店の無限の可能性に挑戦し続けている。
ラーメンの創作活動の傍ら 経営者として 業界の職種的地位向上に尽力。さらに職場環境 待遇の積極的改善 「料理ボランティアの会」を通じてのボランティア活動などを積極的に行っている。

◆主な経歴
・2001 年 株式会社麺屋武蔵 入社
・2003 年 「 麺屋武蔵 武骨」店主に就任
・2004 年 「 麺屋武蔵 新宿総本店」店長に就任
・2013 年 株式会社麺屋武蔵 代表取締役社長に就任

作品紹介

麺屋武蔵 ビジネス五輪書

20年間、業界のトップを走り続けるラーメンの名店・麺屋武蔵。創業以来脈々と伝わる「成功の極意」を2代目社長が語る。
定価:本体1,300円+税/学研プラス

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