私はこれまで3社で会社員生活をし、独立後も数多くのビジネスパーソンと交流してきましたが、いわゆる労働条件の悪い会社を「ブラック企業」だと騒ぐ人に限って仕事が遅いし成果もそれなりの傾向があると感じています。
おそらくその理由は、自分の状況が不満な原因は自分ではなく会社にあり、自分が変わるのではなく、会社が変わることを望んでいるからです。
こういう人たちは、自分の能力を高めることよりも、自分の権利を守ることに必死です。有休が取れないのはおかしい。残業が続くのはおかしい。こんな低い給料はおかしい。労働基準法違反だ。労働環境を改善しろ……。
かくして不満は高まるわけですが、不平不満を抱えながら良い仕事はできないでしょう。結果として、仕事のスピードにも成果にも反映されるのは想像に難くありません。
しかし、仕事が速い人は自分の権利はどうでもよく、チャンスを追い求めます。そして、会社の中にチャンスを見つけたら、すぐに手を挙げます。
そもそも会社はチャンスの宝庫です。
たとえば会社のお金を使って様々な実験ができ、給料をもらいながらスキルを高めることができます。
営業術でも法律でも経理でも、何かを学ぶにはお金を払わなければ教えてもらえませんが、会社はお金をもらって仕事を教えてもらえます。あるいは、会社の看板があるからこそ会える人もいるでしょう。
多少は失敗しても、たいていは始末書とゴメンナサイで済むものです。大きな失敗なら減給やボーナスカットがあるかもしれませんが、職業人生40年と考えれば1回や2回の減俸は誤差の範囲ではないでしょうか。
さらに、ちょっとセコイかもしれませんが、日中はトイレがタダで使えるから、水道代やトイレットペーパー代の節約ができます。
スマホや携帯の充電もできるでしょうし、エアコンも使えるから、自宅の電気代も浮きます。中には、コーヒーが飲めたり社食があったり、子どもを預かってくれる会社もあります。
定期券が支給されれば、その区間は実質タダで乗り降りし放題。会社のお金(出張旅費)を使って、初めての場所にも行けるでしょう。
●目の前の仕事に全集中力を傾ける
それはともかく、仕事が速い人たちにとっては、仕事はお金を稼ぐ手段というより、自分を成長させる手段という捉え方のほうが強いのです。だから多少のブラック環境などは気にせず仕事に邁進します。
私の友人で、現在は独立起業してバリバリ稼いでいる人のほとんどは、若い頃は超絶ブラック企業に勤めていました。 たとえばリクルートや光通信出身の起業家に聞くと、1日400枚の名刺交換をしていたとか、ガムテープで受話器を手にぐるぐる巻きにして立ってテレアポしていたとか、土下座営業をしたことがあるとか、壮絶な過去を持っています(現在はそこまではないそうですが)。
同期が次々と退職していく中、彼らは踏ん張って成果を出し、表彰されたり昇進したりし、やがて起業して成功を摑んでいます。
彼ら曰く、「確かにしんどかったけど、他の会社は知らないし、目の前の仕事に必死で会社の文句を言っている場合ではなかった。給料なんて使う暇もなく、給与明細を開封するのも数える程度だった」と言います。
もし彼らが当時「労基法うんぬん」などと権利を振りかざしていたら、きっと今の彼らはなかったでしょう。
もちろん、うつや過労死になってはいけないので、どこまで働くかは個々人の判断になります。
しかし、「目の前の仕事に専念する」「自分が出すべき価値にフォーカスする」ことは、それ以外の雑音を消してくれる効果があるということ。
会社に問題点があるなら、合理的で説得力のある提案をすればいい。それをせずして不平不満があるとしたら、本気で仕事に取り組んでいないということです。
午堂 登紀雄 (ごどう ときお)
1971年岡山県生まれ。米国公認会計士。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームのアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、著書『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)がベストセラーとなる。同年、不動産投資コンサルティングを行う株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。経営者兼個人投資家としての活動のほか、出版や講演も多数行っている。『お金の才能』(かんき出版)、『頭のいいお金の使い方』(日本実業出版)、『オキテ破りのFX投資で月50万円稼ぐ!』(ダイヤモンド社)、『日本脱出』(あさ出版)ほか著書多数。
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