七百万回再生された 「ウェーイ!」

茂木健一郎『もっと結果を出せる人になる!「ポジティブ脳」のつかい方』セレクション

更新日 2020.07.29
公開日 2016.06.27
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 私自身、毎日を元気に過ごせている最大の要因は、人の生き方に「正解」を求めないところにあるような気がしています。

 日本では多くのみなさんが、進学や就職など人生の方向を決定する重要な場面に立ったとき、「一流企業に入れる大学」「従業員1000人以上の大企業」といった「正解」を求める傾向があるようです。
 よくよくお話を伺ってみると、どうやら「どうなっても間違いのない方向」を選んでおけばいいということらしいのです。たしかに、私たちをとりまく現代の社会は、状況がめまぐるしく変化しています。明日の自分がどうなるかの予測もつきませんから、こうして安全策を取るのも重要な人生戦略といえるかもしれません。
 けれども私には、人生にはそんなふうに万人が共通して納得できる「正解」があるようには思えないのです。
 こうした「正解」をもとに考え、行動する習慣ができていると、いざその基準に自分が外れたとき、脳には大きなストレスがかかります。そして、“安全策”だったはずの人生が停滞し始めることもあるのです。
 それでは元も子もありませんから、あらかじめ自分が思った道から外れたときに身を守る心のセーフティネットをつくっておく。こんな工夫も「ポジティブ脳」の正しいつかい方だと思います。
 では、どのように世間の「正解」という色眼鏡を外せばいいのか。
 私はそんなとき、ちょっと「おバカ」になってみて、心を自由にしておくことが大切だと思っています。
 ちょっと前のことになりますが、私が宮崎県の延岡にお邪魔したとき、恒例の早朝ジョギングをしながら、ちょっと変な6秒のショート動画を撮影してツイッターにアップしたことがあります。
 それはただ、走りながらピースサインを出して「ウェーイ」とつぶやいたところを自撮りしただけの、いささかおバカな動画です。

 けれどもみなさん、これが……、なんと七百万回も再生されて、「超人気動画」として世の中に広まってしまったのです!

 いったいなぜ、この「おバカ動画」にこれほどまでの反響があったのでしょうか?

 本当のところはまったく謎ですが、ただその手がかりとして、その動画をご覧になった方々からたくさんのコメントをいただきました。
「すごく賢い人がはっちゃけてるのを見て、みんな同じなんだって勇気をもらいました」「ウェーイ!は、何回見てもハッピーになります」など、多くは共感のコメントであったように思います。
 そもそも私は、自分のことを偉い人とか、賢い人などとは思っていません。有名だとか、無名だとかいう考えもありません。
 学者という肩書き、有名人という肩書き……。そういった世の中の「正解」にしばられるつもりはまったくないのです。
 そんな無駄な基準をさっぱりと捨てて、“フラット”に楽しく生きている私の「ウェーイ」な姿を見て、多くの方が元気になっていただいたのかもしれません。
 けれども、いわゆる秀才と呼ばれる人たちは、頭がいい、賢い、お金持ちである、容姿がいいといった基準を捨てられず、結果としてそこから外れてしまったとき、とても苦しんでしまうのです。
 私たちは、そうした「正解」を捨てて、心の自由を持っておきたいものですね。そうすれば、どんな苦境におちいっても落ち込むことがありません。
 つねにリラックスして、世の中の「正解」から自分を解放しておく――。

 これも、今の時代を生きるための「ポジティブ脳」の知恵だと思います。

 

茂木健一郎 (もぎ けんいちろう)

1962年東京生まれ。 東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。 理学博士。脳科学者。
理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。 専門は脳科学、認知科学であり、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。
2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。 2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。
主な著書として、『結果を出せる人になる!「 すぐやる脳」のつくり方』『もっと結果を出せる人になる! 「ポジティブ脳」のつかい方』(ともに学研プラス)、『人工知能に負けない脳』(日本実業出版社)、『金持ち脳と貧乏脳』(総合法令出版)などがある。

 

作品紹介

もっと結果を出せる人になる!「ポジティブ脳」のつかい方

「フラットな脳」で自分らしく、楽しく生きると「大きな結果」がついてくる! 大ヒット作「すぐやる脳」に続くシリーズ第2弾!
定価:本体1,300円+税/学研プラス

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