ハーバードのエグゼクティブはITの動向には気を取られない
森若幸次郎『ハーバードのエリートは、なぜプレッシャーに強いのか?』セレクション
ハーバードビジネススクールは比較的、保守的な傾向を持つ学校であると思います。
保守的といっても、ただ現状にあるものを頑なに守るということではありません。政治、経済、科学……世界のルールを作っている。そんなイメージが近いように感じます。
スタンフォードのように、何か斬新なモノを生み出してイノベーションをもたらすことを「世界を変える」と表現するとするならば、ハーバードは、それとはちょっと違います。
ハーバードビジネススクールが開設するサイト内、「OUR MISSION」というページの冒頭に、次のような言葉があります。
「We educate leaders who make a difference in the world.」
直訳すれば、「ハーバードビジネススクールは、世界に違いを見せるリーダーを育てる」。
世界に違いを見せる──一見するとわかりにくい言葉ですが、私は「今ある世界をもっと豊かにする、よりよく改善させていく」といった意味合いで解釈しています。
ハーバードビジネススクールは、ケースメソッド(企業事例を読み解き、どうすべきかを考えたり話し合ったりする学習形式)の活用で世界的に有名です。世界中に研究所を置き、多種多様な企業を分析し、それをテキストにして徹底的なケーススタディを行う
。つまり、今世界を動かしているビジネスを研究対象にしているということです。
今ある世界を徹底的に分析して、もっとよい方向へと改善していく。
そのスタンスを理解した上で、実際にハーバードで学んでいる人たちに接してみると、確かにそこにはハーバードらしい人物が集まっていました。
まず、ハーバードでは誰もITの動向を気にしていませんでした。最新技術を追求しているわけではなかったのです。
また、彼らは起業にもほとんど無関心でした。戦略上の必要性があるときは別として、新しく会社を興すことに特別な価値を抱いているわけではなかったのです。
実際、PLDには投資銀行やオイル&ガス(いわゆる石油ビジネス)の出身者が一定数を占めていました。
私がヘルスケアに携わっているというと、一度だけ「どうして君はそんなに儲からない仕事をしているのだ」といわれたことがありました。彼らの多くは、「巨大資本によって大きな力を持つことこそがビジネスである」という意識を持っているようでした。
シリコンバレーで0から1が生まれるとすると、その1あるものを売って回して100にしていく。より売れるような基盤を作っていく。
同期生たちは、そのスキルを養うために学んでいたのです。
森若幸次郎 (もりわか こうじろう)
株式会社シリコンバレーベンチャーズ 代表取締役社長CEO
株式会社モリワカ 専務取締役CIO
実業家・イノベーションプロバイダー。
ハーバードビジネススクール/エグゼクティブMBA(PLD:Program for Leadership Development)を日本人最年少で修了し、スタンフォード大学経営大学院でM&A、シドニー大学で経営学を学ぶ。現在、国内外の企業20社以上の経営に従事。米国シリコンバレー、デンマーク、アジア諸国を中心に宇宙・医療・教育・芸術産業の活性化を推進し、各地でイノベーション創出を目的としたワークショップやリーダーシップセミナー等を開催している。
作品紹介
ハーバードビジネススクールの頂点「エグゼクティブMBA」の日本人・最年少修了者が「超一流のマインドセット」を大公開!
定価:本体1,300円+税/学研プラス