ものづくりではなく「心のイノベーション」を追求する

森若幸次郎『ハーバードのエリートは、なぜプレッシャーに強いのか?』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2016.04.28
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 では、なぜハーバードは1のものを100にすることができるのか。その秘訣は、問題解決を常に追究しているからではないか、と私は分析しています。
 たとえば、ある企業が、世界の誰も真似できないような技術を開発し、東京スカイツリーの10倍以上も高い世界一の高層タワーを作ったとしましょう。
 完成したタワーを見たら、確かに「すごいな」とみんなが驚嘆するに違いありません。でも、その尋常でなく高いタワーができたからといって、何か直接的にみんなの生活や環境に大きなメリットをもたらすでしょうか。
 一方で、世の中の人が日常の中で抱えている隣人トラブルや職場の対人関係、貧困や差別といった問題が解決されるならば、そちらのほうが、よほど価値が大きいのではないでしょうか。

 もちろん、私は技術の追究を否定しているわけではありません。たとえば、iPS細胞のような最先端の研究が、病気で苦しむ世界中の人にとって福音になりうる可能性を秘めていることも知っています。
 どんな小さな技術であっても、自分の力で0から1を生み出した人を、私はとても尊敬しており、憧れの気持ちも抱いています。
 しかし、前述したように、自分の素質が「1→100」にあることを自覚していることもあり、私は既存のものを大きくする、よりよくしていくハーバード流に強いシンパシーと期待感を持っています。

 実際のところ、今の日本を見渡してみると、国内はありとあらゆるモノであふれています。戦後の日本がものづくりで成長してきたのは事実ですが、ものづくりに頼って成長する時代はすでに終わっているのではないかと思うのです。
 これからの日本に大切なのは、ものづくりよりも価値づくりです。
 目の前に山積している悩みや問題をどう解決するか。何か新しいものを作るよりも、みんなで協力して、今自分が立っている持ち場をよりよいものに変化させていく。いわゆる問題解決のためのサービス開発であり、社会に対する新しい価値づくりです。
 これを私は「心のイノベーション」と呼んでおり、その手法を極限まで深化させているのがハーバードビジネススクールだと思います。
 ハーバードはビジネス全体の問題を解決するための解決策を追究している。ハーバードの出身者は、解決策を出すことができる。だから、彼らが行うビジネスは必然的に利益を上げて、世界的に影響力を持つようになっている──。
 ハーバードで学ぶことで、私はこの当たり前の事実に気づいたのです。

 

森若幸次郎 (もりわか こうじろう)

株式会社シリコンバレーベンチャーズ 代表取締役社長CEO
株式会社モリワカ 専務取締役CIO
実業家・イノベーションプロバイダー。
ハーバードビジネススクール/エグゼクティブMBA(PLD:Program for Leadership Development)を日本人最年少で修了し、スタンフォード大学経営大学院でM&A、シドニー大学で経営学を学ぶ。現在、国内外の企業20社以上の経営に従事。米国シリコンバレー、デンマーク、アジア諸国を中心に宇宙・医療・教育・芸術産業の活性化を推進し、各地でイノベーション創出を目的としたワークショップやリーダーシップセミナー等を開催している。

 

作品紹介

ハーバードのエリートは、なぜプレッシャーに強いのか?

ハーバードビジネススクールの頂点「エグゼクティブMBA」の日本人・最年少修了者が「超一流のマインドセット」を大公開!
定価:本体1,300円+税/学研プラス

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