悩み3 親として経験が足りないのではないか

和田秀樹『7歳までに知っておきたい!「ひとりっ子」の育て方』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2015.06.26
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ひとりっ子と第1子は条件が同じ
 ひとりっ子のお母さんは、自分の子育て経験がきょうだいっ子のお母さんに比べて少ないことについても、不安を抱きます。
 しかし、考えてみてください。きょうだいっ子のお母さんだって、ひとり目を育てたときには、まったく経験がなかったはずです。
 その点で見れば、きょうだいっ子の第1子とひとりっ子は、親の経験知という条件ではまったく同じです。
 では、きょうだいっ子のふたり目以降と、ひとりっ子との比較ではどうでしょうか。
 ふたり目だから、子育ての経験知は確かに豊かでしょう。しかし、お母さんの子育てがそれだけうまくいくかといえば、一概には言えません。
 ひとり目の子育てが運良く成功していたなら、「ああ、このとおりでいいんだ」と、そのやり方を踏襲できますから、「経験がある」ということは、それなりに有利です。
 しかし、ひとり目の育て方に満足できていないときは、どうでしょう。

●経験知は、必ずしも子育てに役立つわけではない
 たとえば、期待どおり勉強してくれないとか、引っ込み思案だったとかで、第1子の子育てがお母さんの思うように進んでいないとき、
「ふたり目は失敗しないようにしよう」
 と思っても、その方法はこれまでの経験からは引っぱり出せません。何しろ、前の子育てはいわば失敗経験なのです。
 親の経験知は、ひとりっ子もきょうだいっ子の第1子も同じ。そして、第2子以降にそれを生かせるかについては、第1子の結果次第。
 このことから考えると、「経験」というものを、そう深刻にとらえることはありません。
 経験がなくてわからないと思ったら、たとえば自分の親に聞いたり、小児科の先生に聞いたりすればいいことです。子育ての勉強をするにも、ひとりっ子である方がきっと時間が取れることでしょう。

●晩婚の親は人生の経験知が高くて有利!
 ひとりっ子というのは、結婚が遅く、年齢が高いお母さんの家庭に多い傾向があります。
 私は、それもまた、ひとりっ子に有利な要素だと思っています。親というものは、子育て経験以上に、人生の経験が豊富であることが重要だと思うからです。
 子育てのその場その場で、「あれをしていいか」「これはどうか」という判断を下すとき、よりどころになるのは、お母さん自身の人生経験です。
「これをしていい」という判断は、子育ての経験だけでなく、社会の常識からも裏打ちされるべきものです。人生経験が豊富で社会常識に詳しいほど、自分の判断を信じられる、というところがありますから、晩婚のお母さんは有利だと言えます。
 晩婚というと体力を気にする人もいますが、今時のお母さんは40代、50代になってもずいぶん若いままですから、若いお母さんとも体力的にほぼ対等ではないでしょうか。子どもを背負ってフルマラソンをするわけではないのですから。
 体力で太刀打ちでき、人生経験は豊富。親として、言うことないと思います。

和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。

作品紹介

7歳までに知っておきたい!「ひとりっ子」の育て方

ひとりっ子の子育ては心配だらけに見えて、実はメリットが一杯です。「ひとりっ子でよかった!」と心の底から思える本。
定価:本体1,300円+税/学研プラス

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