秀吉の第1の出世の秘訣は、 信長を裏切らなかったこと。
千田琢哉『20代で知っておくべき「歴史の使い方」を教えよう。』セレクション
仕事で大切な能力の一つに、相手を裏切らないことがあると思う。
当たり前だと思うかもしれないが、これはとても難しい。
相手を裏切るのは、二通りの場合がある。
一つは悪意があって裏切る場合であり、もう一つは悪意がないのに裏切る場合だ。
悪意があって裏切る場合は、本人がそうしたいのだから誰も止めることはできない。
だが、悪意がないのに、結果として裏切る形になってしまうことは、意識しているかどうかは別として誰にでもあり得る。
私にも、これまで数え切れないほどそうした苦い経験がある。
ここで大切なことは、こちらに悪意がなくても、相手にとってそれは裏切られた事実に変わりがないという点だ。
あなたに悪意がないまま相手を裏切った場合にこそ、心の底から反省できることが大切なのだ。
秀吉が出世できたのは、主君である信長を裏切らなかったからだ。
間違っても、秀吉が信長の陰口を言ったことなどないだろう。
実際のところ、信長の期待に応えられなかった経験は、秀吉にとって数え切れないほどあったと思われる。
そんな時、彼は文字通り命がけで謝罪し、命がけで約束を果たそうとしたはずだ。
頭脳明晰で勘の鋭い信長であれば、相手が期待に応えられないことを本気で反省しているか否かなど、瞬時にわかるからである。
きっと秀吉は、身分の低い自分が可能な限り出世するためには、信長にしがみついていく以外に方法はなく、いつでも死ぬ覚悟があったのだろう。
実際に、秀吉が本気で天下を狙い始めたのは随分と後の話で、それほど歳の変わらない信長の天下統一に尽力することが自分の使命だと確信していたはずだ。
もしも誤解されて信長に殺されるなら、それもまた本望という覚悟はあったのだ。
(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。4回目の次回は7月10日掲載予定です。)
千田 琢哉 (せんだ たくや)
文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。
■E-mail
info@senda-takuya.com
■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/
作品紹介
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