ここで、子どもが勉強嫌いになってしまう理由を考えてみましょう。
小学校入学当初は、勉強が嫌いだと思っている子どもは皆無と言っても過言ではありません。大多数の子が勉強にいいイメージをもち、早く勉強してみたいと思っていることでしょう。それが、なぜ学年が上がるに従って勉強嫌いになってしまうのでしょうか。
低学年の場合、その理由は2つあると考えられます。
ひとつ目は「わからない」ことが挫折体験になって、勉強が嫌いになってしまうというパターンです。今の日本の教育システムでは、1クラス30〜40名の児童に対して教師は1名、クラス全員の学力に応じた授業をすることは、限られた時間と人員では非常に難しいことだといえます。これでは、わからない子どもが出てきても無理はないのです。
わからないところが出てくると、子どもは勉強することが楽しくなくなってやる気を失います。そのままの状態が続くと、勉強嫌いになってドロップアウトしてしまうのです。逆に、わかり続けていれば、勉強を続けることは苦痛ではなく、自分は賢いと自信をもち続けられます。
ですから、いかにして「わからない」という体験をさせないか、ということが大切になります。子どもが学校で習ったことを「わからない」と言ってきたら、できるだけ早く、親が教えましょう。学校の先生とは違うやり方で教えたら、すんなり理解できたということもよくありますし、先生に遠慮して不明点を聞けない子もいるので、フォローが必要です。
「先生の教え方がたまたま合わなかったんだね」と伝えて、子どもが悪いのではないということを、きちんと理解させましょう。そうした親の声かけで、子どもは自信をなくさずにすむのです。
和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。
作品紹介
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定価:本体1,300円+税/学研プラス
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