子どもにやる気を出させるために、「○○を買ってあげるから」というエサで釣るようなやり方は「絶対にダメだ」という人もいますが、私は問題ないと思います。
エサがもらえないとやらないような子どもにしてしまうのは好ましくありませんが、ここぞというときにごほうびをあげることは、労働による対価を得られた感を子どもに教える上でも大切だと思います。
子どもにしても、何もしないでほしいものを買ってもらうよりは、何かをクリアして買ってもらったほうが達成感もあり、うれしく感じるものです。結局は、ごほうびがいけないわけではなく、やり方の問題ということです。
たとえば「満点を取ったら○○を買ってあげる」だったのに、90点でも「頑張ったから買ってあげる」としたら、子どもは「そのレベルでいいんだ」と思ってしまいます。あるいは、最初からあまりにも無理な課題を与えてしまうと、そもそも挑戦する気すらおきません。
また、小学校低学年くらいの時期は、まず努力が報われる体験をしておくことが重要だと思います。そのため、結果ではなく努力の対価としてのごほうびがいいでしょう。結果に対する報酬としてしまうと、努力をしていないわりにごほうびを得られたり、しているわりに得られなかったりします。
例としては、誰でもできるような「漢字を100字書いたら○○」、あるいは、やっていればできるようになる「10問の計算式が30秒で解けたら○○」と言ったものです。ごほうびは大好きなごはんのおかずや、300円程度のお菓子でいいのです。
そしてそういう経験を重ねて、十分に努力をする子どもになったら、次の段階に入りましょう。
「今度のテストで100点を取ったら○○」など、計画的に努力していかなければ達成できない課題に変えて、ごほうびも少し大きなものにするのです。そうすることで、結果に向かって頑張る子どもになると思います。
中学受験にしても大学受験にしても、計画的に努力しないことには「合格」というごほうびは得られないのですから。
和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。
作品紹介
「勉強が得意な子」をつくるお母さんの戦略
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