色眼鏡1 「ひとりっ子は友達作りが苦手」は本当?

和田秀樹『7歳までに知っておきたい!「ひとりっ子」の育て方』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2015.07.24
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友達作りが得意な子にするには
 まずは、「ひとりっ子は友達作りが苦手」という「色眼鏡」について考えてみましょう。きょうだいがいないため、お殿様のように育って相手の心がわからず、友達が作れないという発想です。
 実際のところ、友達作りが苦手な子どもに足りないのは、きょうだいなどではなく、他人とコミュニケーションを取る力です。特に子どものうちは、「本音を打ち明け合う」といった複雑なコミュニケーションは必要ないので、単に「話す力」をつけていけばいいだけです。
 フランクに話せる相手がいれば、子どもは話す力を身につけていきます。
 その相手がきょうだいである必要はありません。むしろ親の方が、子どもの話を根気良く聞いてあげられる分、適しています。
 まずは、お母さんが「家の中では、何でも言っていいのよ」という雰囲気を作ることです。思春期前の子どもは親に何でも伝えたがりますから、それに耳を傾けてあげればいいのです。
 その際に重要なのは、子どもの話がどんな内容であっても、否定せずに聞くということです。
 7歳ぐらいまでの子どもの脳は、感情を隠すとか、状況に合わせて情報を取捨選択するといった段階まで発達していませんから、思ったことを何でも口にします。学校から帰ってきて、「○○君てブタだし、バカなんだよ」「▽▽君なんて嫌いだ、ぶっ殺したいなぁ」といった話を、あたりまえにしてくるのです。
 その際に、ぎょっとしたお母さんが「そんなこと言うなんて、悪い子ね」などのことを頭ごなしに言うと、子どもはこう考えてしまいます。
「ぼくが思ったことは、お母さんなら思わないような、悪いことなのだ」
 自分だけが邪悪な心を持っていると感じ、本心を語らなくなってしまいます。

子どもの言い分を認めてあげる
 親に内緒にしたい本音を子どもが持つようになるのは、思春期になってからの話です。それまでは、子どもが親に本心を隠すような関係は、絶対に避けなければなりません。子どもが話に自主規制をかけるようになると、いじめにあっても親に打ち明けられない、といった事態が起こります。
 もしも子どもが、他人の悪口めいたことや暴力的なことを言ってきたら、「へえ、○○君てブタでバカなんだ。あなたはスリムだし、頭もいいもんね」「へえ、▽▽君をぶっ殺したいんだ。お母さんも子どものとき、ケンカして悔しくて、『あの子なんか死んじゃえ』って思ったことがあるなあ」
 と、まずは子どもがそう考えること自体は正当だと認めるのです。
 だからといって、子どもがそうした行動を取ってしまうと考えるのは早計です。
 自分の考えを「そうなんだ」と聞いてもらうだけで、子どもは満足できます。そうして言い分を認められた子どもは安心し、親に隠しごとをしなくなります。
 親密なコミュニケーションを取る上では、「お母さんには、何でも言っていいんだ」と認識させることが、非常に重要です。

和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。

作品紹介

7歳までに知っておきたい!「ひとりっ子」の育て方

ひとりっ子の子育ては心配だらけに見えて、実はメリットが一杯です。「ひとりっ子でよかった!」と心の底から思える本。
定価:本体1,300円+税/学研プラス

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