第三の「すぐやる脳」の法則は、「ベストエフォート方式」です。
真面目な人や完璧主義者にありがちなパターンなのですが、たとえば英語を勉強しようと決めて三日目までは続いたのに、何らかの理由で四日目にできなかったときに、「ああ、やっぱり私にはできなかった」「これだから、私はダメなんだ」と嫌気がさして、以後はすっぱりやめてしまうことがあります。
でも、よく考えてみてください。四日目にできなくても、五日目からまたやってみるほうが、そこであきらめてしまうよりはるかによい結果が待っています。
このように、あきらめてやらないよりも、途中からでもやったほうがいいじゃないかという考え方が、ベストエフォート(最善努力)方式です。
やる気を持って何かをすぐやるときには、「ベストエフォートでいいんだ」ということを、徹底的に自分に叩き込むことが大事なポイントになってきます。
もちろん私自身も何かを始めてみて、できない場合があります。
確かに、そのときには罪悪感や「あ、ダメだ」という気持ちも起こりますが、その「心のゴミ」のようなものを処理する時間が短ければ短いほど、その後の展開がよくなると実感しています。
このベストエフォート方式で、「やれる範囲のことをやる」という哲学を骨の髄まで染み込ませる。そうすれば、自分に対して言い訳をする必要がなくなります。
うまくいくコツは、罪悪感などの「心のゴミ」をできるだけ速やかに処理すること。
するととてもスッキリして、すぐやる勇気が湧いてくるのです。
茂木健一郎 (もぎ けんいちろう)
1962年東京生まれ。 東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。 理学博士。脳科学者。
理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。 専門は脳科学、認知科学であり、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。
2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。 2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。
主な著書として、『結果を出せる人になる!「 すぐやる脳」のつくり方』『もっと結果を出せる人になる! 「ポジティブ脳」のつかい方』(ともに学研プラス)、『人工知能に負けない脳』(日本実業出版社)、『金持ち脳と貧乏脳』(総合法令出版)などがある。
作品紹介
過重なストレスと処理すべきタスクに溢れた現代を生き抜くには「すぐやる脳」が必要だ!脳科学者・茂木健一郎流・行動力強化術。
定価:本体1,300円+税/学研プラス