自己肯定感を育むには、「勉強」がいちばん!

和田秀樹『12歳までが成功のカギ!「頑張れる子」の育て方』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2015.05.29
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 さて、頑張れる子にするために、具体的に何をしたらよいでしょうか。
 基本的に、スポーツでも音楽でも、お子さんが興味をもったものがある場合はそれでかまいませんが、そうした際立った興味がないお子さんも多いことでしょう。そうした場合に、私は「勉強」をおすすめしています。ここで、なぜ「勉強」なのかということについてお話ししましょう。

 そもそも子どもが自信をもってできることなら、何でもいいのです。ただ、たとえばサッカーやバイオリンは、才能や適性の要素が大きく、誰もが等しく上達することはできません。上達しないことで子どもの自信を奪うリスクを考えると、少々ハードルが高いジャンルといえます。スポーツや芸術の世界は、それこそ天才でなければプロとして生き残れない、厳しい世界なのです。
 その点、勉強は方法論が確立されているので、やり方を知った上でコツをつかんで努力をすれば、誰もが成功体験を得やすいものなのです。
 加えて、気を抜いて勉強を怠ると成績が下がってきます。「勉強を続けてやっていなくてはだめだ」と、頑張り続けることの大切さを子ども自身も理解しやすく、納得させやすいという利点があります。そして、勉強はできた・できなかったということがわかりやすいのもいいところです。
 頑張れば、頑張ったなりにテストの点数は上がります。目の前の努力で「点数アップ」という、わかりやすい成功体験を得られることは、自己肯定感を身につける好条件を備えています。そのため、頑張れる子になる土壌が比較的つくりやすいといえるわけです。小学校ごろまでなら、家庭で親が密接に教えられるというメリットもありますね。

「勉強が大事ってわかるけど、そんなにガツガツ勉強ばかりさせるのはどうも……」と思う親御さんも、中にはいるかもしれません。
 しかし、ちょっと周りを見てみればわかることですが、日本ではあらゆる面で格差が広がっていますね。暗い世相の話になってしまいますが、経済・地域格差に始まり、学力や就職格差など、社会の隅々で格差が生じているといっても過言ではありません。
 この先、お子さんが成長して活躍する時代は、今よりもっと厳しい社会となっているかもしれない、と考えることもできます。
 そんな世の中で生き延びていくのは、どんな人間、どんな人材でしょう。きっとこれまで以上に、懸命に勉強をして、本物の実力を身につけた頑張れる人ではないか、というのが私の答えです。
 大人は様々な経験を経て、勉強にまつわる様々な否定的な要素を身につけてしまいます。けれども、子どもは純粋です。覚えたこと、考えたことが身につく楽しさを素直に気持ちに表します。ゲーム感覚で楽しみながら成功体験が手に入る「勉強」は、未来につながる「最良のトレーニング」といえるのではないでしょうか。

和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。

作品紹介

12歳までが成功のカギ!「頑張れる子」の育て方

どんな環境でも心が折れずに立ち上がる、「頑張る子」の育て方を、教育評論家・心理学者の和田秀樹氏が本音でコーチ!
定価:本体1,300円+税/学研プラス

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