負荷が大きいほど、克服した喜びも大きい!

茂木健一郎『結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方』セレクション

更新日 2020.07.29
公開日 2015.05.27
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 自分への「無茶ぶり」というプレッシャー。それを工夫しながら実行することが、脳の栄養になるということを、私は日々学んでいるわけですが、その工夫のひとつとして、「タイムプレッシャー」という手法があります。
 これは「この時間内でこの仕事をすべて終わらせる」、あるいは「この時間でここまで原稿を書き上げる」など、時間制限を自分の中に設ける手法です。
 制限時間は脳の「抑制」にならないのか? とてもいい質問ですね。
 これまでに「脳の活動は抑制や制約により停滞する」と言いましたが、それはあくまで「他者からの制約」です。自分で自分に課す「自分からの制約」は、逆に脳のモチベーションを上げる行為となるのです。
 私は最近、「一日に英語を千ワード書く」ということを日課にしているのですが、これが思った以上に大変な作業です。
 一日二十四時間、数珠つなぎのような仕事をこなしつつ、何とか時間をやりくりしているのが私の日常です。毎日欠かさずに英語を千ワード書くとなると、自分自身にタイムプレッシャーをかけなければ実現できません。これを毎日続けていくうちに、ようやくハイスピードで英文を書けるようになってきました。
 時間とは圧縮する、つまりやることの密度を濃くするほど、内容の質が高くなると言われます。忙しくて時間が取れない人ほど、このタイムプレッシャーはとても有効な手法だと思います。

 そのほかに私がよく利用するのは、できるかどうかわからないことを、あえて他人に公言してしまう「公言プレッシャー」です。
 最近私がソーシャルメディア上で公言したことは、「東京マラソンに出ます」という表明でした。これもまた、日頃のトレーニングをサボらないよう、自分にプレッシャーをかけるためのものです。
 それから、自分の体重データの推移をネットで公開しているのもそのためです。当然ですが、リバウンドしてしまえばみんなにわかってしまう。そこで、自分にプレッシャーをかけて体重をキープするエネルギーに変えているというわけです。
 誰もが私のように、マラソン出場や、体重カミングアウトをしなければならないわけではありません。
 たとえばお酒やタバコをやめてみることなども、公言の格好のテーマとなるでしょう。困難を克服しようと挑戦している者を、人は応援したくなります。そんなあなたを周囲もきっとサポートしてくれるはずです。

 自分に負荷をかけ、克服する。その負荷が大きいほど、喜びも大きくなります。できることから少しずつチャレンジしてみてください。

 

茂木健一郎 (もぎ けんいちろう)

1962年東京生まれ。 東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。 理学博士。脳科学者。
理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。 専門は脳科学、認知科学であり、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。
2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。 2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。
主な著書として、『結果を出せる人になる!「 すぐやる脳」のつくり方』『もっと結果を出せる人になる! 「ポジティブ脳」のつかい方』(ともに学研プラス)、『人工知能に負けない脳』(日本実業出版社)、『金持ち脳と貧乏脳』(総合法令出版)などがある。

 

作品紹介

結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方

過重なストレスと処理すべきタスクに溢れた現代を生き抜くには「すぐやる脳」が必要だ!脳科学者・茂木健一郎流・行動力強化術。
定価:本体1,300円+税/学研プラス

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