男女共に、人生で一度くらいは、死ぬほど好きな人にフラれる経験をしておくといい。
死ぬほど好きな人というのは、妥協のない、本命中の本命のことだ。
本命中の本命にフラれるとわかるが、かなりの絶望を味わうことだろう。
絶望を味わうと、歩くスピードが遅くなり、フラれたあとに自分がどのように帰ってきたのか憶えていないまま、ベッドやソファで眠ってしまう。
寝ても覚めても「あ、フラれたのか」と、くよくよ現実を反芻する日がしばらく続く。
こうしてフラれた経験を人生の早いうちに積んでおくと、あとから「これほどラッキーなことはなかったな」とわかる。
たとえば、就活で全敗中の学生が自殺を考えることがある。
その学生にとっては、これまでの人生で最大の挫折であり、自分の全人格を否定されたように思えたことだろう。
「本命にフラれた経験」がない学生にとって、就活の面接で落ちるのは耐えられない屈辱だ。
特に容姿に恵まれて、異性から言い寄られるのが当たり前だった学生が面接で落ちると、それが人生で初めてフラれた経験ということになる。
私などは受験という受験にすべて敗北したし、
スポーツでも負け続け、
本命の彼女にもフラれ続けてきたため、
就活は天国だった記憶がある。
フラれることなど寝る前の歯磨きのようなもので、すっかり免疫ができていた。
フラれ続けた人生を歩んできて、本当にラッキーだった。
現在の就活戦線が厳しいことは、とてもいい傾向なのだ。
就活が厳しくなければ、人生の前半で挫折を一度も味わうことができない。
挫折を一度も味わったことのない人間に、まともな仕事はできない。
なぜなら、人の心の痛みを理解できない人間にできる仕事など、この世に存在しないからだ。
ひょっとしたら、優秀で挫折を経験したことのない読者もいるかもしれない。
だが、挫折を経験することなど簡単だ。
自分よりはるかに格上の人や組織に挑戦して、完膚なきまでに打ちのめされればいいだけだ。
ぐうの音も出ない敗北は、
必ず人生のどこかで噛み締しめておく必要がある。
千田 琢哉 (せんだ たくや)
文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。
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■ホームページ
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