人間関係のイライラ、クヨクヨには意外な「原因」があった!

石原加受子『母と娘の「しんどい関係」を見直す本』セレクション

更新日 2020.07.17
公開日 2014.08.01
  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

 最近は、心理相談の専門機関を訪れることに抵抗が少なくなり、私のカウンセリングルームにも、幅広い年齢層の方々が来られるようになりました。
 相談内容は、対人関係の困難さを訴えるものが多く、たとえば職場や友人関係であれば、こんな悩みです。

「仕事中に関係ないことを考えて、いつもミスや失敗をしてしまいます。上司や先輩に注意されてばかりです。『失敗しないようにしよう、叱られないようにしよう』と思うほど、ミスや失敗が増えます。最近、仕事をするのが怖くなってきました」
「トラブルが起こると、クヨクヨと悩んでしまいます。職場の同僚に馬鹿にされても、友だちにひどいことを言われても、そのときは平静を装っていますが、後で悔しくなってきます。すぐに反論できればいいのにといつも思うけれど、いざとなるとできません。後で思い出しては腹が立つ、ということを繰り返しています」
「職場に、ずるく立ち回っている同僚がいます。やり方がうまくて誰も気づきません。そして、自分の仕事を他人に押しつけていることを、自慢げに私に言います。なぜかみんなに慕われていて、職場の人たちにも腹が立ちます。真面目に仕事をしている者ばかりが損する世の中なんだ。そう思うと、怒りがふつふつと湧いてきます」

 ミスしてしまった自分を責めてみたり、嫌なことを言う他人に憤ってみたり……。平気な顔をしているようですが、こうしたことを四六時中考えているので、みんな心が疲れてヘトヘトになっているようです。
 ただ、「私が悪い。私はダメな人間」と自分をいくら責めてみたところで、その悩みが解消することはありません。反対に「相手が悪い」と心の中で責めつづけても、相手がよい人になってくれることもありません。逆に、そうやって他者の存在に囚われていくことで、自分がどんどん苦しくなっていきます。
 その苦しみを、「自分」でなく「他者」の問題として捉えている限り、相談者がそこから解放されることはないのです。

 カウンセリングでは、表面的な人間関係にとどまらず、その方の根本的な考え方や生い立ちなども丁寧に聞いていきます。すると回を重ねていくうちに、そうした対人関係の苦しみが、実は自分の家庭環境や親子問題に起因していることに気づく人も、少なからずいます。
 一見、仕事や友人の悩みと自分の親子関係とに、関係があるなどとは思えないと思うかもしれません。けれども実は、自分が育ってきた家庭環境で〝習得したもの〟が、よくも悪くも、人間関係に大きな影響を及ぼしているのです。
 しかも、本人が抱える困難が大きければ大きいほど、もとをたどっていけば家庭環境や親子関係に行き着きます。長年かけて、親と子どもが共同で、知らないうちに人間関係の苦しみを育てているのです。

 心の問題は、当人でなく、まずその親が相談にやってくることも少なくありません。そうした親の多くは、自分たちに問題があるとは考えず、「子どもに問題がある」と主張します。たとえ明らかに親のほうに問題があると言える場合でも、絶対にそれを認めようとしない親もいます。
 けれども、そんな親を責めることはできません。なぜなら、子どもたちと同じように、親自身も自分の「過去の傷」が癒されていないからです。
 親も子どもも、傷ついてきた自分の過去を癒せずに苦しんでいます。その傷を抱えたまま、知らないうちにお互いのエネルギーを奪い合っています。
 そうして、家庭で長い時間をかけてでき上がった自分たち親子のあり方が、そのまますべての対人関係に、さまざまな影響を及ぼしてしまうのです。
 とりわけ昨今は、母と娘との間で問題が深刻化しています。
 娘に依存する母親、そして母親の「愛情」という束縛を振り切れず、我慢に我慢を重ねる娘……。単なる母と娘の関係のこじれというケースもあれば、娘の側が摂食障害やうつなどの深刻な症状を引き起こすケースもあります。

 次回、そうした母と娘の問題を根本から解き明かし、母と娘が新たな関係を築くための方法をご提案したいと思います。

 

石原 加受子 (いしはら かずこ)

心理カウンセラー。
「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。 思考・感情・五感・イメージ・呼吸・声などをトータルにとらえた独自の心理学をもとに、性格改善、親子関係、対人関係、健康に関するセミナー、グループ・ワーク、カウンセリング、 講演等を行い、心が楽になる方法、自分の才能を活かす生き方を提案している。
『母と娘の「しんどい関係」を見直す本』(学研プラス)、『仕事・人間関係「もう限界!」と思ったとき読む本』(KADOKAWA)、『わずらわしい人間関係に悩むあなたが「もう、やめていい」32のこと』( 日本文芸社)、『金持ち体質と貧乏体質』(KKベストセラーズ)など著書多数。

 

作品紹介

母と娘の「しんどい関係」を見直す本

母親と娘が抱えるストレスの原因を解きほぐし、親子ともに「新たな人生」を歩むための工夫を人気カウンセラーが提案する。
定価:本体1,400円+税/学研プラス

バックナンバー

  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

あわせて読みたい