男性にも、女性にも、それぞれ、ため込みがちなモノがあります。
特に、男性は、プライドを大事にする生き物。「自己重要感」を満たしてくれるモノ、「自分はすごい!」とアピールできるモノを抱え込みがちです。
よくある例をあげてみましょう。
*コレクター商品
男性の部屋にズラリと飾られた、フィギュアや骨董、レコードなど、そのジャンルにおいて価値があるとされる、ストーリーやロマンが込められたモノの数々。
棚や壁に並べて見せびらかす男性も多いものですが、こうしたアイテムを抱え込むのは、「オレってすごいんだぞ!」と、モノを通じて主張しているようなもの。
根っこには、モノを通して自己重要感を満たそうとする心理があるようです。
また、男性には狩猟本能がありますから、モノを持ち帰り、コレクションすることそのものが喜びにもなるようです。
コレクター商品は、その業界においては、何十万、何百万もする価値があるモノなのかもしれませんが、興味のない人には、ゴミやガラクタ同然だったりするものです。奥さんがガラクタ同然に見えた旦那さんのモノを勝手に捨てて、大バトルが勃発するといったことも少なくありません。
*ネクタイ
定年後の男性が、捨てられないモノとしてあげる代表格がネクタイです。
100本近くものネクタイを手放せないという男性がいました。ビジネスマンならネクタイは必需品ですが、彼は定年を迎えてからすでに何年もたっており、ネクタイを締めるのは冠婚葬祭のときくらい。たまにネクタイを締めて外出したくなったとしても、さすがに100本はいりません。
ネクタイを締める機会がそうそうないことも、ネクタイの数が多すぎることも、その男性はちゃんと認識しています。けれど、奥様がネクタイを処分しようとすると、かたくなに拒否するのです。
なぜ、その男性は、使いもしないネクタイを抱え込んでいるのでしょう?
多くの男性にとって、ネクタイは社会における存在価値の象徴。かつての自分の地位や、自分がビジネスの一線でバリバリ働いていたという証拠品なのです。
ネクタイを処分してしまうことは、過去の自分と決別すること。ネクタイを手放せば、自分と社会とのつながりが断ち切られてしまう。そんな気持ちから、男性はネクタイに固執してしまうのかもしれません。
*本
ネクタイと同様、男性が捨てられないモノとしてあげる代表選手が本です。
本は知の象徴であり、本をたくさん読んでいる人はいかにも知識が豊富なイメージがあります。
本棚を見ると、その人が何に興味を持ち、どんなことに関心を持っているかがわかります。頼りにならないと思っていた男性の本棚を見て、「思ったより意識が高いんだ」とか「もしかして思った以上に頭がいいかも」などと、彼を見直した女性も多いのではないでしょうか。
男性が本を抱え込む背景には、知識コンプレックスが潜んでいる可能性があります。「知識があるオレ」「デキる男」であることを証明したい。かしこく思われたい……。周りから一目置かれたい欲求が、男性は特に強いのでしょう。
たしかに本棚に並べられた多くの本は、本棚の持ち主が多くの本を読んだという証です。それらの本から得た知識を持っているという証拠品です。
けれど、何度も繰り返し手に取って読む本は、そうそう多くはないはずです。
ましてや本を捨ててしまうと、それを読んだことによって得た知識まで消えてなくなってしまうわけではありません。頭の中にしっかり残っているはずです。
つまり、知識の多さを蔵書の数で証明する必要はないのです。
大量の英語の学習書、大量のビジネス書、大量の教養本、大量の小説など……、大量に並んでいる本の種類によっても、何に対して執着、あるいはコンプレックスを持っているかがひもとけます。
資料を捨てられないという男性にも、同様の心理が隠れています。
やました ひでこ
東京都出身。石川県在住。早稲田大学文学部卒。 学生時代に出逢ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を日常の「片づけ」に落とし込み、誰もが実践可能な自己探訪メソッドを構築。 断捨離は、心の新陳代謝を促す、発想の転換法でもある。 著者が創出した「断捨離」は、今や一般用語として広く認知され、年齢、性別、職業を問わず圧倒的な支持を得ている。 処女作『断捨離』(マガジンハウス)は、日本はもとより台湾、中国でもベストセラーとなり、『俯瞰力』『自在力』(いずれもマガジンハウス)の断捨離三部作ほか、著作・監修を含めた関連書籍は累計300万部を超えるミリオンセラー。 本書は、初の大人の男女向けの作品。
作品紹介
空間を整えると、人生がととのう。溜め込みと抱え込みで、人生を重たくしている大人の男女に向けて、断捨離の極意を紹介する。
定価:本体1,300円+税/学研プラス