考え方の癖やメンタルの問題への 最初の対処法

浜田真実『9割の人が知らないプロの常識で説得力のある声をつくる』セレクション

更新日 2020.07.20
公開日 2017.08.31
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 自分の声やコミュニケーションになんとなく違和感があるとき、原因はひとつではなく、さまざまな問題が複雑に絡み合っている場合がほとんどです。心と身体は密接に結びついていますので、心が疲れ果てると身体的な病気を発症することもありますし、身体の使い方の癖や姿勢が心にも影響を与えます。

 人間は驚いたときや恐怖を感じたとき、息を飲み込みます。肩が吊り上がり首の後ろが短くなり、胸を抱えるような姿勢で背中を丸め、みぞおちに力を入れて身構えますこのとき全身の筋肉は緊張していますし、心臓の鼓動も早くなります。交感神経が高ぶっている臨戦態勢です。
 これは一九二九年に生理学者のウォルター・B・キャノンによって提唱された動物の恐怖への反応で、「闘争逃走本能」と名づけられています。闘うべきか逃げるべきか、瞬時の判断が必要とされる高ストレス状態にあるときの生理的な反応です。ストレスの原因が去った後は身体の緊張を解き、呼吸を深めることで副交感神経が優位になりリラックスできます。
 ところが人間は、記憶された恐怖の場面を、頭の中で何度も反芻します。すると身体は、そのたびに反応し身構え臨戦態勢になります。ストレスを感じさせる原因が目の前から消えても、記憶の中の恐怖と闘い続けることになるのです。
 心療内科のデイケアプログラムで会う人たちは、常に高ストレス状態にあったため、身構えた姿勢が定着しています。身体がガチガチに緊張し、生命を維持するのに必要最低限の浅い呼吸だけを繰り返しています。心の病気の発症は、こうした身体の生理的な反応も大きく関与しているのだと私は考えています。

 考え方の癖やメンタルの問題は、ひとりでは気づきにくいものですが、「なんとなく」の違和感がサインになります。自分の問題を発見し整理するために、勇気を持ってカウンセリングなどを利用するのも良いと思います。
 でも、まずは身体を動かしてみましょう。大きく伸びをして、軽いストレッチやマッサージなどで硬くなってしまった筋肉をほぐします。筋肉がほぐれたら、呼吸も深まります。これだけでも、随分スッキリするはずです。特に首の後ろを伸ばす、胸を開く、腰をゆるめるなどのストレッチは効果的です。ぜひ取り入れてみてください。

 身体を動かすことや声を出すことは、気持ちを切り替えるための助けになります悩み過ぎて考えが堂々巡りをしているときにも、落ち込んでいるときにも、ほんの少しだけ勇気を持って明るい陽射しの中で散歩をしたり、筋肉をほぐして深呼吸をしたりして、心と身体をノビノビと気持ちよく遊ばせてください。無理がなく、自然な声で穏やかなコミュニケーションをとるためのベースを整えましょう。

(※この連載は毎週木曜日・全8回掲載予定です。次回は、9月7日掲載予定です。)

 

浜田 真実 (はまだ まみ)

ボイスバランストレーナー。マミィズボイススタイル主宰。 歌と朗読と言葉をつむぐ・まほろカンパニー代表。
勝新太郎氏主宰の「勝アカデミー」、TBS「緑山塾」などの俳優養成所を経て、テレビ、舞台、映画などに出演。1987年、シャンソン、カンツォーネを中心にしたレパートリーで歌手デビュー。東京都内のライブハウス、銀巴里、渋谷ジァンジァンなどにレギュラー出演する。2004年、心と身体をつなぐ総合ボイストレーニングクラス「マミィズボイススタイル」をオープン。呼吸法・心理学・歌・朗読・ダンスなどを取り入れた独自のボイストレーニングプログラムを考案。「ボイスバランスメイキング」「ケアボイスワーク」と名付けられたメソッドは、コミュニケーションと声を自由にし、心と身体を豊かに育むと、教育機関・ビジネス研修・福祉施設のデイケアプログラム・セミナー・講演などでも高い評価を得ている。

■マミィズボイススタイル
http://koetokokyu.com/

■まほろカンパニー
http://mahoro.jp.net/

 

作品紹介

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