今回のテーマは「コンシェルジュの仕事」。代官山 蔦屋書店にお邪魔しました。代官山 蔦屋書店は2011年12月にオープン。「森の中の図書館」をテーマに、カフェやレンタルスペース、旅行カウンターまで設置された本屋さんです。中でも特徴的なのがそれぞれの分野で深い知識や経験を持つという「コンシェルジュ」の存在。そもそも「コンシェルジュ」って何?他のスタッフと何が違うの?
『本屋さんのココ』では私と一緒に毎回色々な人に実際に“本屋さん”を楽しんでもらいながら読者の皆様の視点に立ったレポートも加えてお伝えしていこうと思います。 今回は、大学生の秋山史織さんと一緒に、代官山 蔦屋書店ビジネスコンシェルジュ、渡部彩(わたなべあや)さんに店内を案内していただきながら、お話を伺いました。
棚の作り、商品のサイズ、本の内容、全てを理解してから陳列します。
秋山:同じ棚でも置き方に工夫などはあるんですか。
渡部:効果的に置けているかどうか、はよく考えます。1の魅力を100まで引き出せるかどうかは、どの本がどの本と並んでいるか、ということでもあるので。例えば東野圭吾のベストセラーでも、その作品を読んだ後に読みたい作品が東野圭吾の隣に並んでいたら読みたくなりますよね。そういう提案ができているかどうか。それも文芸書やミステリーならなんでも並べればいいというわけではなくて、ちゃんとお客様が手に取りたくなるような本が並べられているか。
松井:「文脈棚」などの名称で、本のサイズや一般的なジャンルにとらわれず棚を作ることが増えていますね。
渡部:それも内容理解がないまま並べると、逆に魅力を損ねてしまうことがあるので気をつけないといけないですね。スタンダードなサイズ別、ジャンル別の並べ方もお客様にとっては、見やすい、探しやすいというメリットがあるので、それ以上の魅力を引き出す並べ方かどうかを意識しないと逆効果になってしまうこともあります。
何を並べるかもそうですが、置き方も工夫します。サイズの違う雑誌と単行本、文庫、あるいは雑貨をどうやったらかっこ良く並べられるか。本棚は本を置くために作られているので、そのまま雑貨を並べるときれいに見えないこともあるんです。同じ本でも雑誌と単行本は形が違うので、同じ棚に並べると逆に見づらくなってしまったり。実は代官山 蔦屋書店の棚は最初から本も雑貨も同じ棚に並べることを想定して作られているんです。
そういう条件をちゃんと理解した上で工夫する。棚の作り、本や雑貨の形、サイズ、その本の内容、それぞれを理解してからどの本をどこに並べて、何を面陳にするのかを決める。自分の体型を理解してからコーディネートする、ファッションみたいなものですね(笑)。
松井:雑貨は本当にいろんな商品があって、形もバラバラですよね。レイアウトはどうやって決めているんですか。
渡部:既存の棚だけじゃなくて、商品に合わせて何でも工夫して使います。他の売り場から陳列台を借りて来たり、本来は棚じゃないものを使ったり。とにかく商品の魅力が引き出せるように、展示方法はいろいろ考えますね。展示用に音響パネルを天井からつり下げよう、という提案をしたこともありました。特に企画コーナーはメーカーさんとレイアウトまで相談していますね。
松井:イベントもコンシェルジュ自身が企画されるんですよね。
渡部:そうです。持込み企画もあるんですが、私は必ず改めて企画書を書くか、しっかり打合せをするようにしていいます。提案された形をそのままやることはあまり無いですね。
秋山:かならずどこかで「編集」するんですね。
代官山 蔦屋書店だからできること
松井:これからやってみたいことなどはありますか。
渡部:代官山 蔦屋書店だからこそできることをもっと追求していきたいですね。ただ本を並べて買ってもらうだけではなくて、もっと既存の形にとらわれない提案、例えば本棚と平台という本屋の構成を什器から変えるような提案を出していきたい。代官山 蔦屋書店はそれができる場所だと思います。
具体的には、売上目標もあります。今ビジネス書売り場は昨年対比も超えて、最高月間売上も更新していて、とてもいい状態なんです。それをさらに増やしていきたいですね。そのためは普通に本を置いて売っているだけではダメなので。その方法はイベントかもしれないし、広告宣伝かもしれないし。何を、いつ、どこでやるのか。その計画を練っているときが楽しいです。
それと同時に、ビジネス書売り場のある1号館全体も牽引していけるといいですね。ビジネス書売り場がこれだけ頑張っているんだったらウチも、と。
松井:相乗効果ですね。
渡部:そこまでやりたいですね。だから皆さんも見に来るだけじゃなくて、ちゃんと買ってくださいね(笑)。
松井 祐輔 (まつい ゆうすけ)
1984年生まれ。 愛知県春日井市出身。大学卒業後、本の卸売り会社である、出版取次会社に就職。2013年退職。2014年3月、ファンから参加者になるための、「人」と「本屋」のインタビュー誌『HAB』を創刊。同年4月、本屋「小屋BOOKS」を東京都虎ノ門にあるコミュニティスペース「リトルトーキョー」内にオープン。