先行試し読み 第4回
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「女の『誰にも言わない』は、『誰かに言う可能性が』あること』
だって教えてくれたのは衣香よ」
連続ドラマ「屋根裏の恋人」より。
主人公・衣香(石田ひかり)の親友・杏子(三浦理恵子)が、衣香に投げかけるセリフ。
今は穏やかな専業主婦として暮らす衣香が、かつて放ったこのひと言で、実は彼女が世の中を斜めに見る複雑さを持つ女だとわかる、キャラクター表現。
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「誰にも言わないから教えてよ」
誰もが一度や二度は言ったり、言われたりしたことがあるのではないでしょうか?
私自身は、このセリフを言うとき、誰にも言わないと心から誓っています。しかし同時に、ここまで言うとき、その聞きたい「何か」は相当スキャンダラスであり、ゴシップ好きにはたまらないネタで、それを自分の心にしまって秘密にしておくことは修行に近い、ということも知っています。
だから私は、このセリフを言われて告白するときは、漏れてしまっても仕方がないと半ば覚悟したことしか話しません。
そうした人間の弱さ、もろさ、いい加減さみたいなものが、私は決して嫌いではありません。むしろ、そういう部分を愛しています。
ドラマの主人公も、出来上がった清廉潔白な人物だと面白味に欠けます。
一生懸命なのに欠点があったり、誠実だけど失敗ばかりしたりとか、何か欠けているほうが親しみやすく、愛されると思ってキャラクターをつくります。
ドラマ「屋根裏の恋人」は、自宅の屋根裏にかつての恋人・瀬野(今井翼)が住みつき、最初は恐れながらも次第に彼との愛におぼれていく主人公・衣香(石田ひかり)を描いたラブサスペンスです。
衣香は、一見優しく穏やかな、理想の良妻賢母に見えます。
しかし、心の中に、幼いころ母親に捨てられた寂しさと無価値観(「自分は価値のない存在なんだ」という想い)を抱えていて、それが世の中を斜に見る毒っ気になっています。
心の声を語る独白は毒々しくシニカルで、私は視聴者の方からお叱りを受けるのを覚悟で書きました。
ところが、予想に反して多くの女性視聴者の支持を受け、「面白い」と評判になりました。「よくぞ言ってくれた」という反応も多くありました。
衣香の"黒い”セリフは、私の心の声でもあります。
私自身、そんな"黒い”ことを考える女なのです。
きっと少し前なら、これほど率直に自分の毒々しさをあらわすセリフは書けなかったことでしょう。
でも、それができるようになった。なぜなのか?
「ありのままの自分」「自分の毒々しさ」を受け入れたからです。
もうこれ以上素敵になんかならなくていい。これ以上優しくなんかなる必要がない。
ゲスくて、ズルく、ケチで、欲深い自分に「許可」を出したのです。
するとその途端に、それは私の愛すべき「一部分」になりました。
その部分を嫌っているとき、まるで、自分そのものが「全部」そうであるように錯覚します。しかし、本当は、それは私の「一部分」でしかありません。
優しく思いやりのある部分も私の一部分。
どちらも、私の同じ「部分」だったのです。
嫌っている自分を受容する。
そうすると、どんな自分もあらわすことができ、表現の幅が広がります。
それは「魅力が増す」ということです。
人を惹きつける素敵な人――。それは、自分にどれだけ許可を出しているか、自分をどれだけ愛しているか、ただそれだけの違いなのかもしれません。
(次回は、5月14日・10:00頃配信予定です)
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2018年5月18日発売予定
『「誰かのためも大切だけど、そろそろ自分のために生きてもいいんじゃない?」』
著者:旺季志ずか(おうきしずか)/定価:1300円+税
【アマゾン、書店で予約受付中】
「読んだら 感想聞かせてね〜。#そろ生き つけてくれたら読みにいくよ」
(著者・旺季志ずかより)
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旺季 志ずか (おうき しずか)
脚本家。徳島県生まれ。立教大学卒業後、女優を志すも挫折。高層ビルガラス清掃から銀座ホステスまで、50種類の職を経験した豊富な人生経験を生かし、数々のヒットドラマを生み出す。代表作に「屋根裏の恋人」「ストロベリーナイト」「佐賀のがばいばあちゃん」「女帝」など。不幸だった自らの人生を変えるべく心理学や哲学を学んだ、自称「心」オタク。その知見を盛り込んだ著書『臆病な僕でも勇者になれた七つの教え』『虹の翼のミライ』(ともにサンマーク出版)では、「エンタメ自己啓発小説」という独自の分野を確立した。本書は著者初のエッセイとなる。
作品紹介
誰かのためも大切だけど、そろそろ自分のために生きてもいいんじゃない?
「ストロベリーナイト」「屋根裏の恋人」の人気脚本が描く、どん底からすべてを手に入れる女(ひと)の過激な生き方マニュアル!
定価:本体1,300円+税/学研プラス
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