秀吉の第2の出世の秘訣は、嫉妬対策を徹底したこと。

千田琢哉『20代で知っておくべき「歴史の使い方」を教えよう。』セレクション

更新日 2020.07.30
公開日 2017.07.10
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 どんなに実力があっても出世できるとは限らないのが、組織に生きる人間の宿命だ。
 私はこれまでに経営コンサルタントとして数多くの組織を見てきたし、2社でサラリーマン経験もしてきたが、実力のある人間が必ず社長になれるわけではなく、偶然に残った者が社長になるという現実にたびたび直面した。
 換言すればそれこそが、組織というものの奥深さと興味の尽きない点なのだ。
 信長の部下にしても、秀吉だけが突出して優れていたわけではない。
 秀吉よりも実力のある部下は何人もいたし、秀吉よりも頭の切れる人材も数え切れないほどいただろう。
 秀吉が優れていたのは、嫉妬対策を徹底していた点だ。
 秀吉は低い身分の出で身を立てた者だったから、周囲は彼に激しく嫉妬心を燃やし続けていたことは想像に難くない。
 それを十分理解していたのか、彼は信長に認められて出世街道を走り続けている途中で、将来ライバルになり得る二人の名前の一部を入れて木下姓から改名する。
 丹羽長秀の「羽」と柴田勝家の「柴」を取って、羽柴秀吉としたのだ。
 よく見ると、両者を立てるようにバランスを取っている。
 下の序列である丹羽氏の二番目の字「羽」を前に、上の序列である柴田氏の一番目の字「柴」を後ろの順番にしているところが、心憎い気遣いではないか。
 もちろんこれは、彼の嫉妬対策が顕在化した一部に過ぎず、日常においてもこうした工夫は数え切れないほどに徹底していたはずだ。
 嫉妬対策とは、常に「アイツは俺よりも下」と安心させておくことだ。
 いまだ実力不足で傑出した存在でもない限り、ライバルにカウントされないノーマークの状態を保っておくことが、組織で出世するためには必須なのだ。
 そうしておくと不思議なことに、サラブレッド同士が潰し合い、ふと気づくと、出世が自分の元に勝手に転がり込んでくるというわけだ。

(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。5回目の次回は7月17日掲載予定です。)

 

千田 琢哉 (せんだ たくや)

文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。

■E-mail
info@senda-takuya.com

■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/

作品紹介

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