たとえば、「お腹が空いたので食事をする」という態度は、「お腹が空いた」という現象を根拠にして「食事をする」という現在の行動を説明しています。つまり決定論的な立場です。
これに対して、同じ現象を目的論の立場で考えると、「生きるために食事をする」という見解になります。つまり「食事をする」という現在の行動は「生きるため」という目的が根拠になっていると考えるのです。
アドラー心理学では、この目的論的立場をかたくなに支持します。そのため、人が特定の困難な状況にある場合でも、それは目的や目標をもつその人が選択した結果だとアドラー心理学では考えます。このように、アドラー心理学には一見冷徹な印象があります。
しかしこの目的論的見解は、人は別の目的を選択することで自分の人生をより良い方向に変えられることをも意味します。変えるか変えないかはその人しだいなのです。
次回は、アドラーが注目した「劣等感」についてお話しします。
中野 明 (なかの あきら)
ノンフィクション作家。1962年、滋賀県生まれ。立命館大学文学部哲学科卒。同志社大学非常勤講師。「情報通信」「経済経営」「歴史民俗」の3分野をテーマに執筆活動を展開。
著書は『超図解 勇気の心理学 アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本』『超図解 7つの習慣 基本と活用法が1時間でわかる本』『一番やさしい ピケティ「超」入門』『超図解「デザイン思考」でゼロから1をつくり出す』『超図解 アドラー心理学の「幸せ」が1時間でわかる本』(学研プラス)ほか多数。
作品紹介
フロイト、ユングと並ぶ心理学の巨人、アルフレッド・アドラーが説く「幸せ」の要点を、短時間で一気に理解できる超図解本。
定価:本体1,200円+税/学研プラス
バックナンバー
- イノベーションを起こす人たちのライフスタイル
- 「ライフスタイル」とは何か
- 劣等感を埋め合わせるため、人は進歩を続ける
- 「劣等感」こそが成長の原動力
- すべての生き物は目標を追求している
- 心理学の巨人・アドラーが示した幸福の「正解」とは?