「録音をして、自分の声を聴いてみましょう」
私がそう言うと、切羽詰まった状況に追い込まれている人たちは、不安そうな表情になります。声について深く悩んでいない人でさえ、一瞬たじろぎます。簡単なことのようですが、声やコミュニケーションに苦手意識がある人にとって、自分の声を聴くことは相当の覚悟が必要なのです。ならば、苦手なことは後まわし。まずは、自分以外の人の声を聴くことから始めましょう。
テレビやラジオから聞こえてくる声に、耳を澄まします。なるべくイヤホンやヘッドホンを使わず、スピーカーから聞こえてくる音声を聴いてください。イヤホンなどを長時間使用していると、耳の機能がダメージを受けて聴き取りにくくなる場合があります。スピーカーから少し離れて、リラックスして聴いてください。自己表現や情報を伝えるプロフェッショナルたちの、魅力的な声がたくさん聞こえてきますね。
次に、話している内容は無視して、声を「音」と捉えて聴き取ってみてください。
例えば、ある人の声は、明るくて伸びやかな感じ。またある人の声は、重低音で深くて響きがあるなど。また、硬い柔らかいや、ザラザラした肌触り、コロコロと丸く弾んだようなど、肌触りや形、色や動きなどに置き換えてみてもいいでしょう。気持ちが安らぐ声、元気にしてくれる声、いつまでも聴いていたい声、聴かずにはいられない声など、心が動かされる声に出会うことがあるかもしれません。
あなたが好きだと感じられる声に出会えましたか?
その声の、どんなところが好きですか?
反対に、好きではない声、聴き心地の悪い声はありましたか?
ただ黙って聴くだけですから、とても簡単です。プロの声には、きっとたくさんの感想が出てくると思います。
では次に、家族や友人や同僚など身近な人の声や、立ち寄ったお店の従業員の声、すれ違う知らない人たちの声など、あなたの近くにいる人たちの声に耳を澄ましてみましょう。
意識的に聴くと、いつもとは少し違って聞こえてきませんか?
聞き慣れたはずの声でも、まったく別の表情を発見したり、元気で明るい人なのに声が妙に沈んでいることに気づいたりするかもしれません。
声には、思っている以上に情報量が多いことに気づかれましたか?
こうして、少しだけ意識して聴いているうちに、あなたの声に対する感性はどんどん磨かれていきます。「聴く耳を持つ」ことが、あなたの声やコミュニケーションを次のステップに押し上げる力になります。
(※この連載は毎週木曜日・全8回掲載予定です。次回は、8月10日掲載予定です。)
浜田 真実 (はまだ まみ)
ボイスバランストレーナー。マミィズボイススタイル主宰。 歌と朗読と言葉をつむぐ・まほろカンパニー代表。
勝新太郎氏主宰の「勝アカデミー」、TBS「緑山塾」などの俳優養成所を経て、テレビ、舞台、映画などに出演。1987年、シャンソン、カンツォーネを中心にしたレパートリーで歌手デビュー。東京都内のライブハウス、銀巴里、渋谷ジァンジァンなどにレギュラー出演する。2004年、心と身体をつなぐ総合ボイストレーニングクラス「マミィズボイススタイル」をオープン。呼吸法・心理学・歌・朗読・ダンスなどを取り入れた独自のボイストレーニングプログラムを考案。「ボイスバランスメイキング」「ケアボイスワーク」と名付けられたメソッドは、コミュニケーションと声を自由にし、心と身体を豊かに育むと、教育機関・ビジネス研修・福祉施設のデイケアプログラム・セミナー・講演などでも高い評価を得ている。
■マミィズボイススタイル
http://koetokokyu.com/
■まほろカンパニー
http://mahoro.jp.net/
作品紹介
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