よく笑うかどうか。それも、声を出して笑うかどうか。
精神科の医師やカウンセラーは、こうしたことを結構、重視しています。
「箸がころんでもおかしい年ごろ」というくらいで、若いときは、なんでもないことに声を立てて笑ったもの。
ところがビジネスマンになると、めったなことでは笑わなくなってしまいます。ところかまわずゲラゲラ笑え、とは言いませんが、家にいるときとか、親しい人と一緒のときなどには、お腹を抱えて、声を立ててどんどん笑ってほしい、と思います。
笑いは人間が高等動物である証拠です。笑うとNK細胞が活性化して、免疫機能が高まるとか、笑うと前頭葉に酸素が行きわたり、パニックや過度な緊張をほぐす効果がある、などと言われますが、いちばんの効果は、大笑いすると、心のモヤモヤがどこかに飛んでいってしまうことでしょう。笑うだけで、精神の緊張がほぐれるのです。
欧米では、巧みなジョークを飛ばして笑いを誘うこともビジネススキルの一つ。ユーモアセンスのある人を、本物のジェントルマンと言うそうです。
私も講演のはじめには、軽くジョークを言って笑っていただき、それから本題に入るようにしています。
鏡を見てあなたの表情が硬かったら、心も固まっていると考えて間違いありません。そんなときは作り笑いでもいいから笑いましょう。テレビで見たお笑い芸人のばかばかしいパフォーマンスを思い出し、声を出して笑えたら上出来です。
それだけで、表情はゆるむはず。すると心もゆるんで緊張がほぐれ、たいていのことは冷静に受け止められます。
和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。
作品紹介
精神科医として多くの悩みに向き合ってきた和田秀樹先生が、困ったときでも心穏やか解決に向かうための「心のコツ」を教えます。
定価:本体1,200円+税/学研プラス
バックナンバー
- 深呼吸で暗示をかける
- いい記憶を「上書き」する
- 一歩、引いてみる
- たくさんほめて、ほめられる人は 心が折れにくい
- 「セルフ・エフィカシー」を高める
- 遠い先のことより 目先のことを考える
- 悩みがあるから、喜びがある。 不安があるから、幸せを味わえる
- 「困った!」と頭を抱えたら、 こう考えてみよう