たくさんほめて、ほめられる人は 心が折れにくい

和田秀樹『仕事・お金・人間関係 「あ~、困った!」と思ったら読む本』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2016.03.01
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「自分はまんざらでもない」、「自分はイケてるほうだ」、「自分はまあ優秀だと思う」。
 こういう気持ちは、だれのなかにもあります。
 アメリカの精神分析家、ハインツ・コフートは、「自己愛」の研究者として知られています。それまで、自己愛はナルシシズムなどと言われ、人はそれを克服することで成長する、と考えるのが主流でした。
 そうではない。人は自己愛があるから成長するのだ。コフートはそう考えたのです。
 他人からほめられたい、認めてほしい。自己愛にはこうした気持ちがあり、それを満たそうとしてがんばる。だから成長するというわけです。
 たとえば、だれかを好きになったとしましょう。でも人は、その人を愛するだけでは満足できません。相手にも自分を好きになってほしいと願います。そのためにおしゃれをしたり、相手の好きな世界について本を読んだり、ネットで情報を集めて勉強したり。
 仕事でいい成果をあげようとがんばるのも、他人に「あの人はデキルね」と認めてほしい気持ちが原点にあるからです。
 それから、こんな場合もあります。
 かっこいい彼と一緒だと、まわりの人が「あんなイケメンを彼氏にしているなんて、すごいじゃない」とあなたの評価も高まる。これも自己愛の一面です。
 すごく尊敬していたり、あこがれている人がいても、自分とは違いすぎると近づきにくいと思うことがあるでしょう。ところが、その人が意外にあわてものだったり、カラオケが大の苦手だったりすると、とたんに親近感を抱いて、ちょっとほっとすることがありますね。これも、自己愛の変形と言えます。
 コフートが主張するように、自己愛はいろいろな形で、人の心理を大きく左右していることがわかります。
 人からほめられる。それだけで人は感情が安定し、不安になったり、イライラすることがなくなります。自己愛は不安や悩みの解消にも大きな力になるのです。
 コフートの考えで方は「人は常に自分をほめてくれる他者を必要としている、そして、そういう風にほめてくれる人を好きになる」とされています。
 自分をほめるだけでなく、相手もいっぱいほめてあげる。
 こうして、おたがいにほめて、ほめられる関係になれば、自分も相手もいい感情を保つことができて、人間関係もうまくいく。
 ほめ上手、ほめられ上手をめざしましょう。

和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。

作品紹介

仕事・お金・人間関係 「あ~、困った!」と思ったら読む本

精神科医として多くの悩みに向き合ってきた和田秀樹先生が、困ったときでも心穏やか解決に向かうための「心のコツ」を教えます。
定価:本体1,200円+税/学研プラス

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