「セルフ・エフィカシー」を高める

和田秀樹『仕事・お金・人間関係 「あ~、困った!」と思ったら読む本』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2016.02.23
  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

 心が折れやすい人はだいたい、自分をちゃんと評価していないものです。それどころか、自分はダメだという思い込みにとらわれていることが多いようです。
「大学は二流だし、いまの仕事だって、内定がなかなか取れなくて焦っていたとき、ようやく内定が出たから入社した中小企業。オレって冴えない人生だよなあ」
 こんな風に思いながら、毎日をやり過ごしていたりしています。
 ブツブツ、グチっているくらいなら、もっと目を見開いて、まわりをよく見てみましょう。あなたのまわりで、大学も一流なら勤務先も超一流というような。ピッカピカの人生を歩んでいるという人がどのくらいいるでしょうか。
『中小企業白書』によれば、日本では、10人のうち6人強は中小企業で働いています。少数派の絵に描いたモチのような人生に目をやって、自分には手が届かないと落ち込んでいないで、自分がすでに手に入れているものを見つめるほうが、ずっとよいはずです

 こんな時代に正社員として働いていられるのであれば、「自分は恵まれているなあ」と思えませんか。
 中小企業のほうがよい面もたくさんあります。規模が大きくない分、早くからいろんなことを任されて、仕事をどんどん覚えられます。大きな組織で歯車の一つのように働いているより充実感があるし、会社の幹部と親しくできるのも、中小企業ならではでしょ
う。
 給料が低い? なんとか生活できるならば、お金よりやりがいを感じられるほうがいい。最近は、こういう考え方をする人も増えています。
 こうして考えてくると、いまの自分はそんなに悪くない、という風に、ちょっと客観的な目を持つだけで、自分の評価は書き換えられることに気づきます。
 もっといいのは、自分はそれほど悪いわけじゃない、と思うようになると、自然に「自分はもっとできる!」という気持ちになっていくことです。
「自分はできそうだ」「きっとできる」という気持ちを、心理学では「セルフ・エフィカシー(self-efficacy)=自己効力感」と言います。
 受験生でも、社会人でも、どんどん伸びていき、着実な成果を出す人は、例外なく高いセルフ・エフィカシーを持っています。
 逆に言えば、セルフ・エフィカシーを育てれば、やる気が出てきて、「オレって冴えない人生を生きているなあ」という状態を脱することができるのです。
「自分はダメだ」から「自分はできる」に変えられるのです。
 セルフ・エフィカシーを持つ秘訣は、否定形からスタートしないこと。「オレはダメだ」からはじめるのではなく、「オレはそんなに悪くない」「オレはいいほうだ」から考えるクセをつけていく。
 否定形から肯定形への転換は、ちょっと発想を変えるだけでできるのです。

和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。

作品紹介

仕事・お金・人間関係 「あ~、困った!」と思ったら読む本

精神科医として多くの悩みに向き合ってきた和田秀樹先生が、困ったときでも心穏やか解決に向かうための「心のコツ」を教えます。
定価:本体1,200円+税/学研プラス

バックナンバー

関連コンテンツ

  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

あわせて読みたい