「困った!」と頭を抱えたら、 こう考えてみよう
和田秀樹『仕事・お金・人間関係 「あ~、困った!」と思ったら読む本』セレクション
仕事で行き詰まった。
お金がない。
人とうまくやれない。
人間は、悩みのかたまりのような生きものです。
シェイクスピアの時代にも、『ハムレット』の有名なセリフに「生きるべきか、死ぬべきか」とあるように、古今東西、人に悩みが尽きることはありません。
見方を変えれば、この「悩み」こそが、人をここまで進歩させてきた原動力だとも言えるのです。
悩みがあると、なんとかその悩みを解決しようと工夫をします。持てる力の限り、悩みを乗り越えていこうと力を尽くします。
人間は、こうして進歩してきたはずです。これからも、個人的にも社会全体としても、悩みの解決をテコに、前へ前へと進んでいくでしょう。
悩みと向かい合いクリアしていくことは、達成感や満足感にも通じます。
人は悩みを解決するたびに喜びを感じ、そこからつぎの悩みを解決するための新しい力を得ていくのだとも言えるでしょう。
ところが、なかには悩みを乗り越えることに怖れや不安を感じ、悩みをつらく苦しいものと受け止めて、心が折れてしまう人も少なくありません。
私は精神科医として、心が折れてしまいそうになっている多くの人と向かい合ってきました。心が折れるほどに悩んだのですから、どれほどつらかったでしょう。
人は悩みに直面すると、「困った、もうダメだ……」と思考が停止してしまう傾向があります。
悩みや不安に耐えている人には酷なようですが、「困った」と感じているのは本人だけで、はたから見れば、どうにもならない悩みなどはそんなにありません。
実は、受け止め方をちょっと変えれば、たいていの悩みは悩みでなくなるのです。
「困った!」という悩みも、その実体はちっとも困っていない――。
これは、長いこと精神科医として、深刻に悩み、心を痛めてしまった人と向かい合ってきた私の実感です。
山あり谷あり、悩みあり。それが人生でしょう。でも、気がつけば、どんな悩みも結果的にはやり過ごし、あるいは乗り越えて今日にいたっている。逆に言えば、克服できない悩みはないということです。
和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。
作品紹介
精神科医として多くの悩みに向き合ってきた和田秀樹先生が、困ったときでも心穏やか解決に向かうための「心のコツ」を教えます。
定価:本体1,200円+税/学研プラス
バックナンバー
- 「笑い」で緊張をほぐす
- 深呼吸で暗示をかける
- いい記憶を「上書き」する
- 一歩、引いてみる
- たくさんほめて、ほめられる人は 心が折れにくい
- 「セルフ・エフィカシー」を高める
- 遠い先のことより 目先のことを考える
- 悩みがあるから、喜びがある。 不安があるから、幸せを味わえる