会った瞬間にどんな言葉を相手にかければよいのか、誰もが戸惑うことだろう。そんなときは、相手の服装や髪形、持ち物に気付いて取り上げるとよい。人はみな、他人が自分に興味を持ってくれるとうれしく感じる。
相手が気付いてほしいと思っていることに気付いてあげること、これを「アクノリッジメント(承認するということ)」と呼ぶ。
この場合、別段ほめなくても、気付いたことをただ言葉にするだけでもよいので、口ベタの人もさほど苦にならないだろう。
特に服装は言葉にしやすい。
「そのスカーフ、春らしいピンクですね」
「ネクタイとシャツのコーディネート、キマッてますね」
「そのコート、暖かそうですね。今日は木枯らし一番が吹くって言いますからね」
こんな感じだ。
髪型も話題にしやすい。
「散髪されましたね」
「ヘアースタイルが変わりましたね」
こう言われて不快になる人はいないだろう。
バッグやサイフ、車、ゴルフ道具に特徴があれば、それも言葉にしてみよう。
「そのバッグ、プラダのニューモデルですよね」
「クラブはミズノをお使いですか」
これでOKだ。
さらに効果が高いのが、行動のアクノリッジメントだ。
「いつも机の上がきれいに整頓されていますね」
「電話に出るのが早いね」
「朝一番に来ているんだね」
このように行動について言葉にされると、誰でも自分が認められたことをうれしいと感じるし、仕事のモチベーションにもつながる。
あなたが管理職であるなら、部下の欠点やミスを指摘して行動を改めさせようとするより、行動のアクノリッジメントを活用することをお薦めする。
これを、5メートル手前からの挨拶と併せて使うと、さらに効果的だ。
5メートル手前から相手にアイコンタクトを送り、明るい声で挨拶する。そして「いつも朝一番に来ているでしょう」と言葉をかける。相手がたちまち笑顔になるのが見えるようだ。
これを習慣付ければ、周囲のみんなから受け入れられ、話しやすい人と思われる。
ふだん人間関係を築くことに戸惑いを感じている人は、アクノリッジメントを活用してみよう。相手の存在や行動を認めていることが伝われば、親密なつながりが生まれ、会話もずっと弾むようになるだろう。
ほめなくてもよい。
相手の存在や行動を認めて言葉にしてみよう。
そこから親密なつながりが生まれるはずだ。
野口 敏 (のぐち さとし)
1959年熊本県生まれ。関西大学卒。 平成元年より、話し方教室TALK&トークを大阪、東京、名古屋で主宰。コミュニケーションを感情という観点から深く研究。「今日習った人が、今日少しうまくなる」がモットー。 温かくユーモアにあふれた指導が幅広い支持を得て、これまでに指導した生徒は5万人を超えている。 著書に『誰とでも15分以上会話がとぎれない!話し方66のルール』(スバル舎)、『一瞬で人に好かれる話し方』(学研パブリッシング)、『誰からも大切にされる女性の話し方』(経済界)など多数ある。
作品紹介
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