これからの女の子が 身につけるべき大切な「力」(前編)

和田秀樹『幸せな女の子の育て方 』セレクション

UPDATE 2020.07.31
公開日 2015.03.06

*女の子育ての方針を決めにくい時代

 どんなお母さんでも、元気いっぱいに飛びまわる娘さんを眺めながら、「この子には幸せになってほしいな」という気持ちを強くもつのはごく自然なことです。家庭によって、お子さんに託す理想や期待はさまざまですが、共通するのは、わが子の幸福な人生を願う親心です。私もふたりの娘を育てた親として、その気持ちはよくわかります。ではここで、みなさんに質問です。
「お子さんは将来、ひとりの女性としてどのような人生を歩むと想像しますか? どのような人生であってほしいと願いますか?」
 いろいろな答えが聞こえてきそうですね。なかでも「いいパートナーと巡り合って幸せな家庭を築いてほしい」という声はまちがいなく上位、もしかすると最上位というお母さんもいらっしゃるかもしれません。引き続き、質問しましょう。
「そのとき、娘さんは経済的・精神的にきちんと自立しているでしょうか?」
 これまで私は教育評論家として、多くの親御さんの声を耳にしてきました。娘さんの結婚問題については、かなりはっきりとした願望や意向を口にする方が多いのですが、自立する力について少し踏み込んだ聞き方をしたときには、不思議と漠然とした回答になってしまうのです。それはなぜでしょうか。
 女の子をもつ親御さんの従来の考え方としては、「最終的には結婚できれば、そこそこ幸せになれるにちがいない」というものが主流でした。そして、「社会的自立については結婚と引き換えに不問にする」という考えが暗黙の了解として存在していたのです。
 つまり、女の子育ての最終ゴールは「結婚して専業主婦になること」という共通認識のもと、女性の生き方にある種の甘えが許されていたと言っていいでしょう。
 しかし、どんな親御さんでも、「これからの時代、かつてのような子育ての考え方でいいのかしら?」という漠とした不安がよぎるようです。従来型の考え方と、いまという時代だからこそ芽生え始めた不安のはざまで、女の子育ての方針を決めかねている。そんな状況ではないでしょうか。

*20年後、30年後の社会を考えたとき……

 みなさんに考えていただきたいのは、こうした結婚を最終ゴールとする従来型の考え方が、お嬢さんが大人になったときにも、通用するのかどうかということです。具体的には20年後、30年後を想定して考えてみてください。
 女性の社会進出が相当進んだいま現在も、女の子の間には専業主婦願望がかなり見受けられます。長びく不況の影響による就職難から、働くことよりも家庭に収まって主婦をするほうがいいという女の子が、ここのところ増えています。単なる願望としてそう思うことは個人の自由です。
 しかし現実問題として、それが実現できるのかどうか、またその願望どおりの人生を選択したとして、安心して生きていくことは可能なのかどうかとなると、少し微妙な話になってきます。
 おそらくこれから先20年後くらいには、専業主婦の妻を含めた家族を、すべて自分だけの収入で養っていける成人男性は1割を切るでしょう。へたをすれば5%程度になってしまうのではないかという見方もあります。そうなると最終ゴール=専業主婦という考え方を貫くのは相当に困難です。
 また、仮に結婚したとしても、昨今の離婚率の高さや、離婚にいたらないまでも雇用情勢の厳しさ、一家の稼ぎ手の失業リスクなどを考えると、社会的自立の方法を女性の側もあらかじめしっかりと考えておくことが、幸せな人生を全うする条件である。お母さんには、まずこの点をしっかり認識していただきたいと思います。
 さて、すでに世の中には仕事をもつ兼業主婦はたくさんいて、共稼ぎ家庭のほうが多いくらいです。ですから、「結婚しても、パートに出たりする生き方だってあるじゃないの」と考える親御さんもいるでしょう。しかし、本当にやりたい仕事を自発的に選択して働くのと、職種を選ばず賃金を得るという目的のためだけに働くのとでは、意味合いが大きく異なります。さらにパートと正規雇用では、賃金や雇用条件も大きくちがいます。
 また、「女性だから・主婦だからパートやアルバイト程度でいい」という考え方はまだまだ多く見られます。いままでどおりの、まったく何ごともない状態なら、それでもやっていけるでしょう。しかし、先ゆきの不透明なこれからの世の中、一生何ごともなく平穏に暮らせる保証など、ほとんどありません。
 ですから、いざというときに自活するには心もとない不安定な就業形態しか選択できないようであれば、人生のリスクが大きくなるという点はしっかり押さえてください。

和田 秀樹 (わだ ひでき)

1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。

 

作品紹介

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