伸びる芽を摘んでしまう「減点評価」はだめ

和田秀樹『幸せな女の子の育て方 』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2015.03.27
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 どうもお母さんと女の子の組み合わせを見ていると、「そのやり方はまずいな」と感じる場面にしばしば出くわします。
 男の子の育て方では、いま自信がもてない男の子が多いため、「その子ができることを見つけて、なんとか伸ばしていきましょう」というようなアドバイスがどうしても多くなります。そういうこともあって、親もできるかぎりその方向で子育てをしていこうと考えます。
 しかし、女の子に対しては、親の心のどこかに、「女の子を天狗にしてはいけない」というような独特の心理が根強くあります。そのため、できることを素直にほめるべき場面でも、できない部分を見つけては、それを指摘する傾向があるのです。
 子どもがいい点数を取って得意になっているときに、「でも、テストの点がよくても行儀が悪いじゃないの」「勉強ができたって、部屋の整頓ができなければだめよ」などなど、水を差すようなことを意外と平気で口にするのは、女の子をもつ親のほうが多いように感じます。
 みなさんはいかがでしょうか。残念ながら、多くの親御さんはほとんど無自覚のうちに言っているため、わが子に厳格な減点評価をしていることに気づいていないかもしれません。
 それにしても、こうした傾向はなぜ生まれるのでしょうか。小言めいたことは男の子に対しても言うと思いますが、女の子のほうが、小さいときから比較にならないくらいたくさん言われ続けます。これには、女の子の育て方に関する古い価値観の影響があると考えられます。

・ 自分のできることについて「自分はできる」と堂々表明するような女の子は好かれない
・ 他人にとって自慢に聞こえるようなことを言う女の子はひんしゅくを買う
・ 男勝りにできる女の子はお嫁さんにもらってもらえない

 こうしたことは、気の遠くなるほど長い間、この国の親たちが信じ切ってきたことです。要するに「女の子らしくないことはしてはいけない」ということを、親たちは娘に対して徹底して刷り込んできました。もちろん、勉強ができるということは、親たちが考える女の子らしさからは除外されていました。
 しかしながら、早咲き成長タイプの女の子がまさに伸び盛りの時期に、そんなことを言われたら、勉強好きになるでしょうか。もっとがんばろうとやる気をもつでしょうか。
 これについては私が答えるまでもありません。せっかくいい点を取ってお母さんの喜ぶ顔が見られるかと思ったら、嫌味や小言ばかり言われてしまうというのでは、あまりにかわいそうですね。
 子育てにおいては、伸び盛りの時期には、できる部分を思い切り伸ばすことが鉄則です。ですから、がんばったプロセスや成果に対して、惜しみなくほめることをまず優先してください。うまくいかなかったときには、ぜひ次のチャレンジに気持ちが向かうよう、励ましましょう。
 成長過程の子どもに万能であること、完璧であることを求める必要はありません。「あれもこれもできなければ、わが子には及第点は与えられない」という厳格な考え方に基づいて減点評価ばかりしていては、子どもは伸びる勢いを失います。女の子のお母さんは、そこの部分をどうしても欲張りすぎるきらいがありますから、少し接し方を振り返ってみることが必要です。

和田 秀樹 (わだ ひでき)

1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。

 

作品紹介

8歳までに知っておきたい!幸せな女の子の育て方

これからの厳しい世の中でわが娘を「幸せな女の子」に育てる必須ポイントを、教育評論家・精神科医の和田秀樹氏が本音でコーチ!
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